2008 Fiscal Year Annual Research Report
転写と染色体領域の視点から見たゲノムDNA損傷位置情報の解析
Project/Area Number |
20012026
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
豊國 伸哉 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 教授 (90252460)
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Keywords | 酸化ストレス / 鉄 / DNA修飾塩基 / モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
発がん過程においてはゲノム情報の改変が重要な役割を演じている。本研究においては、培養細胞や個体各臓器細胞のゲノム配列において、紫外線・放射線あるいは酸化ストレスによりDNA塩基修飾の起こりやすい部位を網羅的に同定し、その法則性を明らかにすることを目的とした。これまでに、私たちは鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)腹腔内投与によるラットあるいはマウス腎発がんモデルを開発し、その病態に酸化ストレスが関与すること、主要な標的遺伝子にCDKN2Aがん抑制遺伝子やptprz1遺伝子(がん遺伝子として作用)があることを見出し、ゲノムに酸化ストレスに対して欠損・増幅しやすい領域があることを報告した。本研究課題では、モノクローナル抗体で修飾塩基を含むDNA断片を免疫沈降する技術とマイクロアレイ技術を組み合わせることにより、ゲノム内の酸化ストレスに対する脆弱部位を網羅的に解析した。今年度はFe-NTA腹腔内投与による腎癌モデル初期ならびに、代表的な酸化修飾塩基である8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)に対するモノクローナル抗体を使用した実験を行った。対照のラット腎臓ならびにFe-NTA投与3時間後の腎臓からゲノムDNAを抽出し、制限酵素BmgT 120Iで切断ののちDNA断片の免疫沈降を行い、8-OHdGを含むDNA断片の回収を行った。それぞれ異なる蛍光でラベルした後、comparative genome hybridizationのマイクロアレイにハイブリダイズして解析を行った。すると、8-OHdGは非遺伝子領域に多く、遺伝子領域には相対的に少ないことが判明した。そして、その分布パターンは対照と酸化ストレスのかかった状態でほとんど差が見られなかった。CDKN2A部位では酸化ストレス時に8-OHdGの増加を認めた。来年度はさらにデータを積み重ねて一般法則を見いだす予定である。
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