2008 Fiscal Year Annual Research Report
複合遺伝子変異マウスを用いたがん化・転移シグナルの解明
Project/Area Number |
20012027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 智聡 Kyoto University, 医学研究科, 研究員 (50283619)
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Keywords | がん抑制遺伝子 / がん遺伝子 / セネセンス / DNA損傷応答 / 前がん病変 / Rb / Ras / イソプレニル化 |
Research Abstract |
がん抑制遺伝子Rbは、多くのヒトがんで失活する。Rbをヘテロ型で欠くマウスは、甲状腺C細胞由来良性腺腫(以下アデノーマ)を発症する。我々は、Rbヘテロ型の遺伝学的背景に加え、N-ras、Ink4a、ARF、Suv39hl、ATMのそれぞれを同時欠損するマウスを解析することによって、Rbを欠損するとDNA損傷応答と細胞老化(以下セネセンス)がN-Ras依存的に誘導され、Rb欠損アデノーマ細胞のがん化に拮抗することを証明した。Rb失活によって、E2F依存的にSREBPとその下流遺伝子のファルネシル2リン酸合成酵素、種々のイソプレニル化関連酵素群の発現が誘導されるため、N-Rasの膜輸送と活性が中等度に亢進し、p130依存的なセネセンスを引き起こすことも判明した。この場合、Rbに代わってp130がSuv39hlとのヒストンメチル化複合体を形成する。同時に、がん原性(恒常的活性化型)突然変異を有するN-Rasの存在下では、p130とSuv39hlの複合体が形成されないためにセネセンスが誘導されないことも判明した。更に、Rbは、N-Rasだけでなく、CAAXモチーフを有する多くの蛋白質の膜輸送と活性化を制御する可能性も示された。一方、Rbによるセネセンス制御を更に解析するため、shRNA発現ライブラリーをRb-/-MEFに導入、Rb欠損に追加して不活性化が起きたとき(セカンドヒット)にセネセンス回避を誘導するshRNAをスクリーニングし、陽性クローン約50を得、約10種類の標的遺伝子を同定した。今後も、これらの知見をもとにRbの多様な機能の理解を深め、ヒト臨床癌の克服に役立てる。また、Rbと低分子GTP蛋白質の間の相互拮抗的相互作用が、細胞周期の制御においていかなる役割を果たすのか追求する。
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Research Products
(6 results)