2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクタ胃炎から発癌に至る過程における遺伝子変異導入機構の解明
Project/Area Number |
20012029
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 勉 Kyoto University, 医学研究科, 教授 (30188487)
|
Keywords | AID / H.pylori / 胃癌 / NFκB / CagA / p53 |
Research Abstract |
H.pylori感染によって胃癌が発症する過程では、胃粘膜に種々の遺伝子変異が生成蓄積することが重要である。研究者らは、ホストの遺伝子に変異を入れることが可能なAIDがH.pylori感染によって発現し、それが遺伝子変異を導入することによって炎症発癌に関与することを報告した。そこで本研究では種々の遺伝子改変H.pyloriを正常、AID-KOマウスおよび胃粘膜細胞に感染させることによって、AID発現、遺伝子変異の動態を検討して以下の結果を得た。 1. 正常マウス、ヒト胃粘膜細胞のH.pyloriによるAID発現は、CagE-KO,CagPAI-KO H.pyloriでは認められなかった。一方CagA-KO株ではその発現は70%に減少していた。またCagAC末端のリン酸化部位の欠失、変異では影響をうけなかった。またこれらによる胃細胞におけるNF-kB活性化はAIDの発現の程度と比例していた。 2. 以上より、H.pyloriによるAID発現は、TypeIV分泌装置によって細胞に導入される未知のH.pylori因子がNFkBを活性化させることによって生じると考えられた。またその際CagAはNFkB活性化、AID発現の約30%を担っていると考えられた。 3. 一方、AID-KOマウス、細胞の検討では、H.pyloriによるp53などの遺伝子変異は著明に減少した。ただしこの際胃炎の程度には変化が見られなかった。また胃炎の程度に変化がないにもかかわらず、1年後にはdysplastic lesionの数は著明に減少していた。 4. 以上から、H.pyloriはAIDを発現させることによって遺伝子変異を誘導し、胃発癌を亢進させるものと考えられた。
|