2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期制御因子CDKによる染色体DNA複製制御システムの異常とゲノムの不安定化
Project/Area Number |
20012052
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
田中 誠司 National Institute of Genetics, 細胞遺伝研究系, 助教 (50263314)
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Keywords | がん / 細胞周期 / CDK / DNA複製 / ゲノム不安定化 |
Research Abstract |
がんは正常な増殖制御を失い異常増殖する細胞の集団であり、がん細胞はその細胞周期制御機構自体、あるいはそこに起因する異常を持つ。がん細胞では、i)細胞周期の進行制御経路の異常や、ii)ゲノムの不安定化がその特徴として記述される。CDK(サイクリン依存性キナーゼ)は真核細胞の細胞周期の進行を制御するのみならず、染色体DNA複製が各細胞周期につき一度だけ起きるようにする制御システムの中心にある。本課題ではCDKによる染色体DNA複製制御システムに異常がある時に、染色体の安定性がどのように損なわれ、不安定化してゆくのかを分子レベルで明らかにし、理解することを目指し、解析を行っている。真核細胞の染色体DNA複製はCDKにより制御を受ける以下のような2段階の反応で起こる。細胞周期のG1期に複製前複合体(pre-RC)が形成されて準備を整え、S期に入るとpre-RCが活性化され(複製開始)、複製フォークが形成される。これらの反応が同時に起きると、染色体DNAの再複製が起きるため、これらの反応は細胞周期中で完全に分離しておかれている。本年度は真核細胞のモデルである出芽酵母を用いて、G1期に形成されたpre-RCがS期に入る前に時期尚早に、活性化されないようにしている機構を解析した。出芽酵母はこのような解析を行うことができる現在唯一の系である。その結果、人為的にG1期で複製を誘導すると、ごく初期から細胞は致死となる。生き残る細胞もごく少数存在するが、そのゲノムが著しく不安定化することがわかった。この系ではCDKのターゲットを含む複数の因子が重複して制御されており、そのうちどれかでも破綻すると染色体の不安定化が起きることから、複数の制御系を持つことで非特異的複製開始を抑え、ゲノムを安定に維持していることがわかった(論文投稿準備中)。
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Research Products
(11 results)