2008 Fiscal Year Annual Research Report
β1インテグリン及びその関連分子の癌転移・浸潤及び癌病態における意義の解析
Project/Area Number |
20013010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 幾夫 The University of Tokyo, 医科学研究所, 教授 (30119028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 哲史 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (00396871)
山崎 裕人 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (80376623)
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Keywords | 細胞接着 / 細胞遊走 / インテグリン / 癌転移 / Cas-L / CD9 / EGF |
Research Abstract |
β1インテグリン分子は接着分子としてのみならずシグナル伝達分子として、癌細胞の転移、浸潤、生存、増殖に関与する。本研究において、インテグリン刺激によってチロシンリン酸化される分子として我々が確立したCas-Lと、インテグリンと同一細胞膜上で会合するCD9分子に関して以下の結果を得たので報告する。 1)EGF刺激等の増殖因子受容体型チロシンキナーゼによるp130Casのチロシンリン酸化が報告されているがその詳細な機序は不明である。我々はこれまでに、A549・PC-9といった肺癌の細胞株において、EGF刺激により、Cas-Lがチロシンリン酸化を受けること、そのチロシンリン酸化が、EGFR阻害剤Gefitinibにより特異的に阻害されることを見出した。また、EGF刺激による肺癌細胞株の遊走能がCas-L遺伝子導入により亢進する一方、Cas-LRNAi導入により、この細胞遊走が阻害されることを見出した。NOD-SCIDマウスへの皮下移植を用いた検討では、Cas-LRNAi導入株の腫瘍造生能及び転移能が極めて低下していることを、ルシフェラーゼを用いたin vivoイメージングにより明らかにした。さらに、臨床の肺がん細胞株を用いた検討では、免疫組織化学的なCas-Lの発現レベルと、肺癌患者の悪性度、患者の生命予後との関連に有意な正の相関関係があることが明らかとなり、肺癌の悪性度、転移能におけるCas-Lの関与が強く示唆される。 2)急性リンパ性白血病のうち、B-ALLでCD34+/CDIO-/CD19-細胞が癌幹細胞として報告されている。新たな陽性マーカーを検索するため、培養細胞を用いた細胞表面マーカごの網羅的解析を行った。その結果、B-ALLがCD9高発現細胞において、癌幹細胞としての条件を満たしていることが判明した。すなわち、培養細胞において不均等分裂に類似した増殖をすること、免疫不全マウスへの移植実験では、連続移植においても白血病を発症させる能力があること、患者サンプルにおいても同様の細胞が存在し、マウスへの移植能が高いことが示された。さらに、遺伝子発現解析では、これら癌幹細胞分画においてSrcファミリー蛋白の発現が有意に抑制されていることがわかった。こうして同定された癌幹細胞を用いて、その特性を細胞生物学的、分子生物学的に探索することが可能となった。
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