2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウス膵発癌モデルを用いた膵癌の腫瘍間質相互作用の解析
Project/Area Number |
20013011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊地知 秀明 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (70463841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 慎 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (40415956)
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Keywords | 膵癌 / 腫瘍間質相互作用 / 遺伝子改変マウス / 血管新生阻害 / Kras / TGF-beta / CXCR2 / CXCケモカイン |
Research Abstract |
我々の樹立した膵臓上皮特異的遺伝子改変マウス(遺伝子型Ptfla^<cre/+> ; LSL-Kras^<G12D/+> ; Tgfbr2^<f1/f1>)は、間質の増生・線維化著明な管状腺癌を生じ、臨床の膵癌組織像の特徴をよく近似する。この豊富な間質の存在が膵癌の病態に深く関与していることが示唆される。本年度は、まず、この目的の遺伝子型が安定して供給される状態を立ち上げた。その間にこのマウス膵癌組織や前癌病変の膵組織から樹立した膵腫瘍細胞株、間質の膵線維芽細胞株を用い、本膵癌モデルにおける腫瘍間質相互作用の機序の一端を解析した。膵癌細胞が周囲の微小環境に対し分泌する因子としては、複数のCXCケモカインが特徴的であることがわかった。このケモカインはin vitroでの癌細胞自体の増殖にはほとんど影響しなかったが、皮下xenograftの実験から、膵癌細胞と膵線維芽細胞との腫瘍間質相互作用はin vivoでの腫瘍の進展に促進的に働き、それはCXCケモカイン/CXCR2 axis依存的であることがわかった。実際に本モデルマウスにCXCR2阻害剤を投与すると有意な生存期間の延長が得られ、その程度は膵癌の標準治療薬gemcitabineと同等であった。このCXCケモカインの腫瘍促進効果は、腫瘍血管新生を介したものと考えられた。近年臨床的に実用化されつつあるチロシンキナーゼ阻害剤の中にも血管新生阻害により本モデルマウスの生存を有意に延長させるものがあり、それはgemcitabineとの併用で更なる生存延長効果を示した。 これらの結果から、乏血管性腫瘍である膵癌においても、その腫瘍微小環境において血管新生に関わる腫瘍間質相互作用は腫瘍進展に重要な要素と考えられ、CXCR2等が膵癌治療における重要な分子標的となる可能性が示唆された。
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