2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20013029
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井垣 達吏 Kobe University, 医学研究科, 特命助教 (00467648)
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Keywords | ショウジョウバエ / 癌 / 遺伝学的スクリーニング / 細胞間コミュニケーション / 細胞・組織 / 細胞競合 |
Research Abstract |
本研究は、多細胞生物の上皮組織がもつ「内在性癌抑制メカニズム」を、ショウジョウバエをモデル生物として用いた遺伝学的アプローチにより明らかにしていくものである。ヒトの癌のほとんどは上皮由来であり、上皮の恒常性維持機構の破綻(特に細胞極性の崩壊)は癌の発生と密接に関わっている。実際にヒトの癌においても、上皮細胞の極性崩壊と癌の悪性度とはよく相関することが知られている。一方、多細胞生物の上皮に癌原性の極性崩壊細胞が生じると、正常な組織はそれらの細胞に積極的に細胞死を誘導することにより組織から排除しようとする。このような上皮組織に内在する癌抑制機構は、多細胞生物が癌の発生から自身を守るために進化的に獲得した"安全装置"であると考えられる。しかしながら、上皮がどのようしてこのような癌原性細胞を認識・排除するのか、そのメカニズムについてはほとんど分かっていない。本研究は、これまで全く明らかにされていなかったこの細胞間コミュニケーションを介した上皮組織の癌原性細胞排除メカニズムの全容を明らかにすることを目的とするものである。この目的を達成するため、平成20年度は、ショウジョウバエ複眼成虫原基の上皮組織を用いた「細胞非自律的遺伝学的スクリーニング」を行い、上皮に内在する癌原性細胞排除機構に異常をきたす突然変異系統を複数単離した。得られた突然変異体のうち、sel-1と名付けた細胞排除機構亢進変異体の表現型を詳細に解析した結果、このsel-1遺伝子変異はこれまで報告されている遺伝子群(Hippo経路遺伝子、myc遺伝子)とは異なる新しいタイプのsuper-competitorであることが明らかとなった。そこで平成21年度は、sel-1変異体の責任遺伝子を同定し、その生理機能と内在性癌抑制機構における役割を明らかにしていく。
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