2008 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトールリン脂質が創る細胞極性と細胞運動のメカニズム
Project/Area Number |
20013043
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
深見 希代子 Tokyo University of Pharmacy and Life Science, 生命科学部, 教授 (40181242)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / 細胞極性 / 炎症 / ホスフォリパーゼC |
Research Abstract |
がんの85%以上は上皮系の組織より発生し、上皮糸のがんの多くか組織幹細胞に由来する。申請者らはイノシトールリン脂質代謝の要の酵素であるホスホリパーゼC(PLC)の中でも、PLCδ1は極性のある上皮細胞に発現が非常に多いこと、PLCδ1遺伝子欠損(KO)マウスは皮膚上皮系幹細胞の分化異常により無毛となり、皮膚腫瘍を形成すること、またPLCδ1KOマウスの皮膚では表皮の過増殖が観察されるが、これは炎症反応が引き金になっていることを明らかにしてきている。本年度は、PLCδ1KOマウスでは、好中球数の増大などの免疫反応異常が生じていること等を明らかにした。 1. PLCδ1KOマウスにおける炎症反応と細胞増殖・転移との関連性の解析 PLCδ1KOマウス皮膚において過増殖が観察され、免疫性細胞であるマクロファージ、顆粒細胞、T細胞の浸潤性の亢進、炎症性のサイトカインであるIL-1β, IL-6, MMP-9量の増加が観察された。また末梢血中の血液成分を分析した所、白血球数の有為な増大が見られた。更にカゼインを腹腔中に投与した際に集積する好中球量の増加等が観察された。こうした事実はPLCδ1KOマウスにおいて免疫応答の異常が生じていること、こうした異常が表皮の過増殖や皮膚腫瘍を誘導している可能性を示唆している。 2. 上皮細胞の極性形成におけるリン脂質の役割の解明 上皮系がん細胞である乳癌細胞、大腸癌細胞、皮膚癌細胞等を用いて、PIP2・PIP3のバランスの乱れと浸潤突起形成、細胞接着や細胞極性との相関を検討した。第一に浸潤突起形成にはPIP2およびPIP3が不可欠であることが、リン脂質代謝関連酵素のRNAiにより判明した。またE-カドヘリンの発現にPIP2を産生する酵素であるPIPKIIβが重要な役割を担うことを明らかにした。
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Research Products
(5 results)