2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20013044
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
福井 泰久 Hoshi University, 創薬科学研究センター, 特任教授 (00181248)
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Keywords | PI3キナーゼ / 細胞間接着 / 細胞間相互作用 / p38MAPキナーゼ / カドヘリン |
Research Abstract |
印環細胞がんにおいては細胞がばらばらになることが重要な特徴の一つで、そのために手術による除去が困難になり、治療法が確定していない悪性腫瘍の一つである。なぜ、細胞がばらばらになるのか、その機構を明らかにするために、MCF7細胞を利用して検討した。印環細胞がんではErbB2/ErbB3が活性化されていることが分かっているので、そのリガンドであるヘリグリン(HGR)を細胞に作用させた。その結果、細胞接着が喪失し、細胞がばらばらになることが判明した。これはp38MAPキナーゼの阻害剤で、阻害されること、p38MAPキナーゼを活性化するMKK6の活性化型を導入することで引き起こされることから、p38MAPキナーゼのカスケードが重要なことが分かった。この時、細胞接着に関与しているカドヘリンやオクルディンの細胞接着面からの離脱が観察された。そこで、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の活性化により印環細胞がん様に変化する細胞であるHCC2998細胞でもHGRの刺激による効果を観察した。カドヘリンの細胞接着面での挙動を調べた結果、速やかに細胞接着面からカドヘリンが喪失することがわかり、印環細胞がんでも同様のメカニズムが働いていることが明らかとなった。印環細胞がんではムチンの一種Muc4がErbB2と結合することにより、ErbB2/ERbB3複合体を常時活性化していることを明らかにしてきたが、Muv4は普段はアピカル膜面上に存在するのに対し、ErbB2,ErbB3はバソラテラル膜面上に存在する。したがって、両者が出会うことはないと思われるが、p38MAPキナーゼの活性化により、タイトジャンクション、アドヘレンスジャンクションが無くなることにより、両者が結合できるようになることが想定された。これらの結果により、印環細胞がんの成り立ちのあらましが明らかとなった
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