2008 Fiscal Year Annual Research Report
スキルス型癌の間質浸潤におけるリン酸化蛋白質の解析
Project/Area Number |
20013050
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 正光 Akita University, 医学部, 教授 (20291396)
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Keywords | スキルス / 胃癌 / リン酸化 / Src / チロシンキナーゼ / 酸化ストレス |
Research Abstract |
非常に高い浸潤能を特徴に持ち、悪性度の高いスキルス型胃癌に対する治療標的分子を同定するため、特に癌細胞が腹膜播種してゆく過程で実際にチロシンリン酸化が亢進している蛋白質を同定する試みを行ってきた。そのなかでOssa/C9orf10はスキルス型胃癌細胞において、通常培養状態に比較してヌードマウスの播種組織でより強くリン酸化されている蛋白質として精製・同定されたが、それまで機能解析がほとんどされておらず、データベース上で相同性のある遺伝子が存在していることのみ報告されていた分子である。生体内で癌細胞は血流の変化や放射線、光線療法、化学療法など多くの場面で酸化ストレスに曝されているが、それに抵抗して生存する機構を備えている。解析の結果、同分子は細胞が酸化ストレスを受けた際に誘導されるSrcファミリーキナーゼの新規活性化因子で、活性酸素の産生に応じてSrc/PI3-キナーゼ経路を活性化し、抗アポトーシスシグナルを誘導していたため、Ossa(Oxidative-stress associated Src activator)と名付けた。また一方でOssaはC末部分にRNA結合能を有し、IGF-IImRNAとの結合依存性に細胞増殖因子であるIGF-II蛋白質の分泌を促進する機構によっても癌細胞の生存を促進していた。Ossaはヒトスキルス胃癌手術症例でも癌部で高い発現がみとめられ、その発現抑制はヌードマウスにおけるスキルス胃癌細胞株の腹膜播種に対して阻止効果がみられたため、分子標的治療の対象候補になるのではないかと考えている。
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