2008 Fiscal Year Annual Research Report
がんのメタボローム解析に基づく抗がん剤反応性予測の新戦略
Project/Area Number |
20014025
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷川原 祐介 Keio University, 医学部, 教授 (30179832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 光博 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (10450842)
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Keywords | メタボローム / CE-TOFMS / 5-FU / 核酸代謝 / 薬剤反応性 / バイオマーカー / 個人差 / 個別化医療 |
Research Abstract |
本研究は、細胞内の全代謝物質および抗がん剤全代謝物を一斉分析する"メタボローム解析"により、抗がん剤反応性の個体差を予測しうるバイオマーカーを見出し、個別化投薬への展開を目指すものである。初年度はまず、フルオロウラシル(5-FU)に対するヒト大腸癌細胞の代謝応答を解析し、メタボローム変化から作用発現に関わる主要代謝経路および標的分子群の解明を進めた。 2種類のヒト大腸癌細胞(LS174T、HT29)を低濃度(2μM)、および高濃度(100μM)の5-FUに0〜12時間曝露後、抽出した細胞内代謝物をCapillary electrophoresis time-of-flight mass spectrometry(CE-TOFMS)により一斉分析した。検出された約1000ピークのうち、5-FU代謝物および核酸代謝経路上の内因性代謝物を同定し、2種類のヒト大腸癌細胞の5-FU作用後における細胞内メタボローム変化を比較解析した。活性代謝物FdUMP、5-FUの標的酵素であるTS(thymidylate synthetase)の基質dUMPの細胞内濃度は5-FU曝露濃度によらず両細胞間で同程度であったが、TSの代謝経路上流に位置するdUDP、dUTPの5-FU曝露濃度依存的な著しい細胞内蓄積がHT29において認められた。RNA合成の基質となるCTP、UTPの細胞内レベルについては両細胞において明確な変動が認められなかったが、一方でFUDP、FUTPの細胞内蓄積はHT29においてより高度であった。 抗がん剤感受性の異なる2種類の細胞を比較することにより、これまで論じられることのなかった抗がん剤作用後におけるメタボローム変動の細胞間差異を明確に示すことができた。5-FU作用後の細胞内メタボローム変動プロファイルの違いから、抗腫瘍効果発現の中心を担う代謝経路が細胞間で異なる可能性が示唆された。
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Research Products
(13 results)