2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20014032
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
中地 敬 Radiation Effects Research Foundation, 財団法人放射線影響研究所, プロジェクト代表研究者 (00142117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠 洋一郎 財団法人放射線影響研究所, 放射線生物学・分子疫学部, 部長代理 (60333548)
林 奉権 財団法人放射線影響研究所, 放射線生物学・分子疫学部, 免疫学研究室長 (70333549)
濱崎 幹也 財団法人放射線影響研究所, 放射線生物学・分子疫学部, 主任技師 (80443597)
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Keywords | 免疫 / 原爆放射線 / 炎症 / ゲノム解析 |
Research Abstract |
埼玉コーホート研究と原爆被爆者免疫コーホート研究を統合して、免疫、炎症、放射線被曝、発がんの関係を明らかにするのが本研究の目標である。原爆被爆者コーホート研究では、放射線被曝が免疫学的老化を促進するという仮説を支持する多くの知見が蓄積されてきた。持続性炎症状態の亢進、T細胞免疫の減弱といった免疫学的老化は、原爆被爆者では被曝線量依存的に観察されてきたが、これらががんなどの疾患リスクと関係するかはまだ明らかではない。そこで、原爆被爆者免疫コーホートを対象として、平成18・19年度に測定系を確立した生体指標(網状赤血球小核頻度による遺伝的不安定性の評価、血漿中の活性酸素代謝産物総量)の測定を平成20年度も進めた。一方、炎症によるゲノム損傷の可能性を移植片対宿主病(GVHD)マウスモデルにより検討し、放射線照射したマウス及び照射しないマウスの双方において、血液細胞の移植により惹起された炎症により網状赤血球小核頻度と血漿TNF-αが顕著に増加することが見出された。この結果は、放射線による長期間にわたる炎症状態の亢進そのものが、ゲノムに損傷を与える可能性を示したものである。一方、免疫ゲノム研究により、炎症関連サイトカインIL-10遺伝子のハプロタイプが放射線関連胃がんのリスク要因であり、特に、びらん型胃がんでは放射線被曝によるリスクの増加の程度がハプロタイプによって異なることが見出された。原爆被爆者の大腸発がんのゲノム解析により、炎症関連サイトカインIL-18遺伝子ハプロタイプが結腸がんのリスクに放射線被曝線量とともに関与していることを見出した。しかし、直腸がんではIL-18ハプロタイプ、放射線のいずれもリスクに影響を与えなかった。これらの知見は原爆被爆者の胃・結腸がんの発生に炎症が関与していることを示すものであり、その発がんリスクに少なくとも宿主の遺伝的炎症関連因子と被曝線量の両者が関与することが見出された。
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Research Products
(27 results)