2008 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ付属肢形成における遺伝子ネットワークの解析
Project/Area Number |
20016003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 徹也 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (80262153)
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Keywords | 昆虫 / 発現制御 / 発生・分化 / 付属肢 / 遺伝子ネットワーク |
Research Abstract |
真核多細胞生物の発生過程においては、モルフォゲンによって領域特異的にいくつかの転写因子が発現し、それぞれの転写因子の下流で様々なターゲット遺伝子の発現が制御されることで組織や器官の最終的な形質が形成される。しかし、領域特異的転写因子がどの様なターゲット遺伝子の発現を制御し、それぞれのターゲット遺伝子がどの様に機能することで組織の最終的な構造や機能が実現されるのかについては、ほとんど解明されていない。本研究では、ショウジョウバエの成虫肢形成過程について、以前に行ったマイクロアレイ解析で見出された、領域特異的転写因子のターゲット遺伝子と予想される約1000の遺伝子について、RNAi法を用いた網羅的な機能解析を行い、領域特異的転写因子と最終形態を結ぶ遺伝子ネットワークの全貌に迫ることを目指している。 2008年度は、約200遺伝子について解析を行い、約30%の61遺伝子について、剛毛の形成不全や分節間のジョイントの形成不全、分節の長さや太さの異常、特定の分節内での異常な構造の形成などの表現型を見出した。表現型は、ジョイント構造の一部や特定の種類の剛毛、さらに剛毛のごく一部分などの微細な性質に限定されており、最終形態の形成プロセスはこれら微細な構造形成プロセスに細分化されていることが示唆される。特に、分節の長さと太さが別々の遺伝子の機能阻害によって影響を受けていることから、長さと太さは別々のプロセスによって制御されているのかもしれない。また、リボソームの構築に関わるタンパク質やRNAの転写・伸長に関わるタンパク質をコードする遺伝子などの遺伝子で表現型が見られたことから、基本的な細胞活動の領域特異的な調節も重要なプロセスであると考えられる。さらに、脂質代謝や糖鎖関連の酵素をコードする遺伝子でも表現型が観察され、これまで考えられてこなかった新しいプロセスやメカニズムの存在も示唆された。
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