2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20016004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西住 裕文 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (30292832)
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Keywords | 嗅覚受容体 / 遺伝子発現 / 神経回路形成 / 軸索投射 / マウス |
Research Abstract |
本研究ではマウスの嗅覚系をモデルとして、嗅覚システムの構築に必要なゲノム情報の抽出に関して解析を行なっていく。そこで、1)嗅神経細胞が千種類以上存在するOR遺伝子から一つのみを選択的に発現する機構と、2)嗅神経細胞が軸索を嗅球上のどこに投射すれば良いかを規定する様々な遺伝子の発現を、選ばれたORを介したシグナルが制御する機構、の二点を明らかにすることを目指す。 1)OR遺伝子の負の発現制御の実体解明 一旦機能的なORタンパク質が発現すると、負のフィードバックシグナルにより、他のOR遺伝子の発現が抑えられる機構が存在すると考えられている。負のフィードバックシグナルがβ-Arrestinを介したものと想定し、β-Arrestinシグナルを抑えた場合に、OR遺伝子の発現に与える影響を解析した。OR遺伝子のプロモーターの制御下で、野生型β2AR、あるいはβ-Arrestinシグナルのみ抑制される変異型β2ARを発現するトランスジェニックマウスを作製した。その結果、野生型β2ARを発現させた場合には、OR分子と同様に振る舞い、内在性のOR遺伝子は全く共発現していない。一方、変異型β2ARを発現させた場合には、様々な内在性のOR遺伝子が共発現し、嗅細胞の軸索投射も乱れていた。今後β-Arrestinのknockoutマウスを作成し、この分子の関与を検証する。 2)細胞個性の確立について 発現するORの種類に応じて、嗅細胞の軸索が嗅球のどこに投射し、また同種の軸索が収斂して糸球を形成するかが決まる。この現象は、嗅細胞で発現するOR種類が、ORを介したシグナルによって、複数の軸索誘導分子や細胞接着分子の発現量に変換されることに依っていることが判明してきた。しかし、ORの種類によって発現量が変化する遺伝子の中でも、鼻の穴を塞いで外からの匂い刺激を抑制した場合に、発現量が変化するものとしないものがある。ORシグナルにはその強度以外にどのような違いがあるかを解析した結果、発生段階によってシグナルを伝達する分子の発現が変化しており、大別して未熟と成熟した嗅細胞の間で、一部異なるpathwayを経由することで、分子コード化の多様性が生み出されていることが明らかとなった。
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