2008 Fiscal Year Annual Research Report
進化的特徴の類似性に基づくゲノム網羅的な共生遺伝子の探索ー数理と実験の統合解析ー
Project/Area Number |
20017011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 誠志郎 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特任研究員 (10334301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 元己 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00193524)
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Keywords | 進化 / 機能 / 情報 / 生物間相互作用 / 協力 / 共生 / 植物 / 微生物 |
Research Abstract |
これまでの我々の解析により、既知の共生関連遺伝子群の進化的特徴の解析において、遺伝子重複と正の自然選択、遺伝子機能の平行進化、遺伝子水平移行に伴う宿主特異性進化のような進化現象が新たに見つかってきた。このような共生遺伝子の特徴のうち、遺伝子水平移行と遺伝子重複に焦点を当て、既知の根粒菌感染遺伝子nodA-nodZについて解析したところ、23遺伝子のうち18遺伝子が分子進化的に特徴をもつ遺伝子として予測可能であることがわかった。そこでMesorhizobiumゲノムの全遺伝子のアミノ酸配列を用い解析した結果、共生アイランド全体の検出に成功する一方で、この領域内に数多くの共生とは関係のないであろうハウスキーピング遺伝子の存在が推測された。ここから複数回の共生アイランド水平移行とゲノム内遺伝子転移の可能性が示唆されつつある。さらに本解析による機能推定により、1つ1つの共生関連遺伝子(nod,nol, nif, fix genes)が検出され、他にも共生アイランド外に今まで共生への関与が知られていなかった数多くの遺伝子(アデニル酸サイクレース、転写因子、機能未知遺伝子群(未発見の共生アイランドの可能性))が見つかった。 分子生理実験では、遺伝子破壊と感染実験系の導入に成功しいくつかの試行的な実験結果を得た。過去の研究で見つかった共生関連遺伝子では、多くがその破壊により根粒形成能力の低下が観察されている。本課題の準備研究でもそのような感染数低下型の遺伝子がいくつか見つかったが、逆に遺伝子破壊により根粒数が増える遺伝子を発見した。根粒の半径を測定したところ、野生株よりも遺伝子破壊株の方が、半径は小さくなるという結果を得た。これはホスト側の表現型可塑性により、1つあたりの根粒体積の減少が根粒数で補償され、結果としてホスト側の制裁機構における寛容性を示している可能性がある。本課題ではこの仮説の検証とともに、数多くのその他の遺伝子の機能についても、大量遺伝子破壊により解析する予定である。
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