2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト遺伝子ノックアウトシステムの効率化と疾患遺伝子機能解析への応用
Project/Area Number |
20018022
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
足立 典隆 Yokohama City University, 国際総合科学研究科, 准教授 (30264675)
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Keywords | ヒト遺伝子 / ノックアウト / 逆遺伝学的解析 / DNA鎖切断修復 / ジーンターゲティング |
Research Abstract |
DNA鎖切断修復経路の異常や欠損はさまざまな遺伝病やがんと密接に関連することが知られている. 我々は最近, ヒトpre-B由来リンパ球細胞株Nalm-6を用いて, 遺伝子ノックアウトを効率良く行えるシステムの開発に成功した. そこで本研究では, DNA鎖切断修復に関わる遺伝子について系統的に遺伝子ノックアウトを行い, 得られた変異細胞株の表現型解析を行った. 特に, 遺伝子間あるいは経路間の相互作用の解析を目的として, 二重変異株の作製と解析を進めた. 主な成果の概要は以下の通りである. ・DNA二本鎖切断の修復には, 相同組換えとエンドジョイニングの双方が重要な働きをしているが, 傷の種類や量によって各経路の働きが大きく異なっていることを明らかにした. ・TDP1(脊髄小脳失調症SCAN1原因遺伝子)欠損細胞は, カンプトテシンやブレオマイシンなどの抗がん剤に対して高感受性を示すが, APTX(脊髄小脳失調症AOA1/EAOH原因遺伝子)欠損細胞ではこうした表現型が観察されないことがわかった。この原因を探るため, 二重変異株の作製を進めた. ・DNA ligase IVとArtemis(ともに重症複合免疫不全症の原因遺伝子)はともにエンドジョイニング経路に機能しているが, Artemisはこれとは別の機能をもっており, 修復経路選択に関わっている可能性があることを示した. ・DNA ligase IV破壊株の解析から, ランダムインテグレーションの機構が複数存在していることや, ターゲティングベクターと非ターゲティングベクターとでインテグレーションの機構が異なることを明らかにした. これらの成果は, 今後の遺伝子ノックアウト研究に重要な示唆を与える.
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