2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20019007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福土 審 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 教授 (80199249)
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Keywords | 内臓感覚 / 情動 / 前頭前野 / 前帯状回 / PET / 局所脳血流量 / 催眠 / 扁桃体 |
Research Abstract |
【目的】われわれは、消化管機能と中枢神経の機能的相関の主要経路を明らかにすることを長期的テーマとして研究を推進し、国際的に高い評価を得てきた。過敏性腸症候群(IBS)はこれら内臓知覚過敏と情動異常の双方を示すため、重要な病態である。セロトニン関連遺伝子は、そのストレス反応を規定する遺伝子の候補であるが、5-HT_3受容体の遺伝子多型は分析されていない。本研究では、以下の2仮説を検証した。(1)5-HT_<3A>(HTR3A)及び5-HT_<3B>(HTR3B)遺伝子多型がIBSの病態に関連する。(2)情動異常(alexithymia)単独で内臓知覚過敏の脳画像を示す。【方法】対象は健常対照者(n=229)とIBS患者(n=119)である6肘静脈から採血し、末梢血リンパ球を分離し、DNAを抽出した。DNAをPCR法によって増幅した後、restriction fragment length polymorphism法によってHTR3A及びHTR3B遺伝子多型を検出した。さらに、情動を評価した。また、一部の対象で, positron emission tomography(PET)を施行した。正中肘静脈を確保した後、下行結腸にポリエチレン製バロスタットバッグを挿入した。検査開始30分前から安静臥床とし、Synectics visceral stimulatorと消化管刺激用softwareのpolygramを用いてバロスタットバッグに圧伸展刺激を加えた。刺激と同時に、H2^<15>Oを右正中肘静脈に静注し、PET画像装置島津SET2400で局所脳血流量(rCBF)を撮像した。画像はSPMを用い、alexithymiaによる内臓刺激反応の相関性と反応差を分析した。【結果】IBSと対照の問にはHTR3A(A1596G)の多型差はなかった。しかし、HTR3Bについては、両群にrs1176744(A/C, p=0.03)ならびに畑NO502180(T/G, p=0.02)の有意なアリル頻度差が見られた。すなわち、IBSにおいて、rs1176744のCアリルが高頻度、rs10502180のGアリルが低頻度であった。特性不安はrs1176744多型x性差xIBS一対照群問交互作用(p=0.015)、alexithymiaはrs1176744多型x性差交互作用(p=0.037)に有意差が見られた。内臓刺激誘発時にalexithymia群で非alexithymia群よりも膝前部前帯状回、右島、中脳のrCBF変化量が有意に増大していた。【考察と結論】IBSの治療薬の標的分子の遺伝子多型がIBSに関連することが示された。また、本研究結果から、IBSの病前性格とされるalexithymia傾向者では、内臓由来信号に対するこれらの脳領域の反応性がIBSの診断に至る前に既に増大していると考えられる。
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Research Products
(6 results)