2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20019016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 麻紀 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 客員研究員 (00312281)
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Keywords | 可塑性 / 記憶 / スパイン / CapZ / Arc / LTP / 海馬 / 抑制性神経伝達 |
Research Abstract |
目的 記憶の基盤となるシナプス可塑性が、細胞の全てに同様に起こるのか、一部の細胞が選択されて起こるのか、科学的に明確な答えはまだない。本研究はこの根本的な謎に対して解明への道筋をつけることを目的とした。背景 本研究代表者は、既に発表した論文で、神経細胞は活動依存的に数時間から数日の単位で抑制性神経細胞によってより強い入力を受けることを見いだした。抑制が必要なのは、記憶に神経細胞の一部が選ばれて活動するため、過去に選ばれた細胞が記憶上書き防止のために抑制されると考えた。本課題では少数の細胞が選ばれることを支持する結果を得た。結果 神経細胞スパイン形態変化は、近年、シナプスの可塑的機能変化を反映すると考えられてきている。そこで、Thy1-mGFP TGマウス個体を新規環境に15または60分暴露し60分時点での海馬CA1錐体細胞のスパイン形態を解析した。この際、Arc(活動した神経のマーカー)発現を指標に、各個体で神経細胞群を分類して初めて対照群(新規環境暴露なし)に比べ60分群でのみ差異が見いだされた。すなわち、Arc陽性細胞で大きなスパインが数%増えたと推測できた。少なくともある種の記憶は、一部の(Arc発現)神経細胞の数%のスパインの拡大を伴うと考えられ、日常的記憶にかかわる変化が、一部の神経細胞によるわずかなものである可能性を示唆した(Cereb Cortex. 2009 ; 19 : 2572-)。さらに、可塑的変化を起こしたスパインをマークできる分子を求め、古典的認知症モデルである脳弓切断でのDifferential ScreeningでCapZを同定し、スパインの一部に存在すること、生体内でLTPを起こす強い入力を与えた層に選択的にCapZ免疫染色強度が高まることを見いだした(Genes to Cells, in press)。すなわち、CapZが存在する「一部の」スパインはLTP様の変化をしたと推測でき、LTPマーカーとしてCapZが有望と考えられた。結語 本研究課題によって、個体の記憶に伴う生体内での変化が、予想よりも少数の細胞やスパインで起きている可能性が提示された。
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