2008 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前野-側頭連合野-海馬連関による記憶メカニズムの神経生理・解剖学的研究
Project/Area Number |
20019021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮地 重弘 Kyoto University, 霊長類研究所, 准教授 (60392354)
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Keywords | 神経科学 / 解剖学 / 行動学 / 記憶 / 高次機能 |
Research Abstract |
本研究の目的は、記憶情報に基づいた行動決定の基盤となる、前頭前野、側頭連合野、海馬の3領域をつなぐ多シナプス性神経回路の構成と、その機能を明らかにすることである。 20年度においては、側頭葉-背外側前頭前野間の多シナプス性神経連絡の解剖学的解析を継続するとともに、行動決定における長期記憶と短期記憶の相互作用を明らかにするため、サルに記憶課題を訓練し、行動学的解析を行なった。サルにはまず、それぞれ3種類の刺激図形を含む図形セット2つ(セット1、セット2計6図形)を用いた遅延見本合わせ課題を訓練した。次にセット1を用いた、長期記憶に基づく視覚弁別課題を訓練した。この課題では、見本は提示せず、選択刺激として二つの図形のみを提示する。3種の図形A, B, Cのうち、AとBが提示された場合は常にAを、BとCならBを、CとAならCを選択することが求められる。この長期記憶に基づく視覚弁別課題の学習は、2ヶ月以上にわたってゆっくりと進行した。それに伴い、同じ図形セット1を用いた遅延見本合わせ課題でも、見本に関わらず、視覚弁別課題のルールに従って選択を行なう傾向が顕著となった。図形セット2を用いて、短期記憶に基づく視覚弁別課題の訓練を行なった。この課題では、連続した数十試行にわたって同じ2つの図形が選択刺激として提示され、この間正解は変わらない。しかし、後には同じ2つの図形の組み合わせで、もう一方の図形が正解となる。この訓練は、同じセット2を用いた遅延見本合わせ課題の遂行に影響を与えなかった。今後はこれらの課題を用いて、長期記憶および短期記憶に基づく行動決定に関わる背外側前頭前野の神経活動を、電気生理学的に記録、解析する。
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