2008 Fiscal Year Annual Research Report
認知と運動の統合過程における前頭葉内ネットワークの解明
Project/Area Number |
20019027
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
星 英司 Tamagawa University, 脳科学研究所, 准教授 (50407681)
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Keywords | 到達運動 / 前頭葉 / 運動前野 / 一次運動野 / 前頭前野 / 認知 / 運動 / 階層構造 |
Research Abstract |
これまで運動前野を中心として認知と運動の統合過程における役割を検討してきたが、前頭葉内にある複数の領野のネットワーク構造を明らかにするために、運動前野と解剖学的に皮質一皮質問結合を有する前頭前野を中心に実験的研究を行った。まず、コンピューターシステムを構築して、被験体に行動課題を学習させた。この課題では、提示された視覚情報に基づいて、標的の情報を選択し、到達運動を実行することが要求された。従って、視覚情報の認知、それに基づく動作内容の選択、これらの過程に続く運動の準備ならびに実行の過程を詳細に検討することが可能であった。課題遂行中の被験体の前頭前野から細胞活動を記録したところ、幾つかの興味深い結果が得られた。まず、前頭前野には短潜時で視覚物体を反映する細胞活動が観測されたが、こうした活動は運動前野では殆どみられなかった。続いて、動作の指示内容を反映する活動が観測されたが、これは運動前野と共通であった。従って、前頭前野は、認知情報に基づいて動作プランを形成する機能を有する点において、運動前野と本質的に異なることが明らかとなった。解剖学的には、前頭前野は物体認知の中心である下側頭皮質から入力をもらっていることが示されているので、こうした系を介して物体認知の情報を受け取っていると考えられる。一方で、前頭前野で生成された動作プラン情報は、皮質一皮質問結合を介して運動前野に伝達され、そこで最終的な動作制御情報に変換されると考えられる。このようにして、前頭前野は認知と運動の統合過程において中心的な役割を果たすことが示唆された。
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