2008 Fiscal Year Annual Research Report
視知覚と選択的注意における脳領域間信号伝達の方向性の解明
Project/Area Number |
20020007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂井 克之 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70376416)
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Keywords | 神経科学 / 認知科学 / 脳・神経 / 前頭葉 / 非侵襲的脳活動計測 |
Research Abstract |
本研究は研究代表者が独自に開発した磁気刺激・脳波併用法を用いて、視覚領域間の信号伝達の方向性の変化を数十ミリ秒単位で解析し、視覚認知、選択的視覚注意の動的側面を明らかにすることを目的とする。健常人被験者を対象として、画面上の50個程度の点が決められた一致度で同じ方向に動く刺激(random dot motion)を提示し、この方向をボタン押しにより報告させる課題を用いた。視覚刺激提示後40、80、120ミリ秒の時点で前頭眼野に低強度の磁気刺激を加え、これによって誘発される後方視覚領域の脳電位変化を調べた。この電位変化は刺激部位から他の領域へと到る神経投射の信号伝達効率を反映していると解釈される。15人の被験者を対象とした実験では、視覚刺激提示後40ミリ秒の時点では動き方向の一致度による前頭葉信号伝達効率の差は見られなかったが、80、120ミリ秒では動き方向の一致度が低いほど前頭葉信号伝達効率が上昇するとの結果が得られた。これはエビデンスの乏しい感覚情報に対する判断において前頭葉からのバイアス信号が関与すること、そしてその時間的変化を始めて明らかにするものである。さらにこの課題において、先行する試行での動き方向判断が続く試行の判断に影響を与えるとの行動学的結果が得られたことから、そのメカニズムを検討すべく磁気刺激・脳波併用実験を行った。あいまい性の高い低い一致度のrandom dot motion刺激に対して動き方向を判断した際にはより強い前頭葉制御信号が発せられ、これによる脳領域間機能的結合が変化するとの仮説を検証中である。
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