2008 Fiscal Year Annual Research Report
初期視覚系における広域視野情報の統合的処理のメカニズムと認知的意義
Project/Area Number |
20020016
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 宏道 Osaka University, 医学系研究科, 教授 (50154092)
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Keywords | 一次視覚野 / 外側膝状体 / 刺激文脈依存的反応修飾 / 受容野 / 方位選択性 / GABA抑制 / ネコ |
Research Abstract |
ネコやサルの一次視覚野(V1)のニューロンは、受容野外に刺激を呈示すると、受容野刺激に対する応答が抑制性の修飾を受ける。特に受容野内外を一様な図形パタンで刺激した場合に反応が強く抑制され、異なる図形パタンで刺激したときには顕著な抑制が生じないため、この性質は刺激文脈依存的反応修飾と呼ばれ、視野の分節化処理の基礎と考えられている。他方で、初期視覚系において物体の輪郭の傾き検出に重要な性質である方位選択性は、HubelとWiesel(1962)の仮説提案以来、方位選択性を示さぬ外側膝状体(LGN)からの求心性線維のV1ニューロンへの収束によって形成されると説明され、LGNとV1の神経結合の機能は視床-皮質間の情報変換のモデルとされてきた。 しかしながら私たちはネコの初期視覚系で刺激文脈依存的反応修飾のメカニズムについての検討を進める過程で、LGNニューロンにおいて最適空間周波数より高い空間周波数をもち受容野よりも大きなグレーティングで刺激すると90%以上のサンプルで有意な方位チューニングが出現することを見いだした。またこのLGNニューロンの方位選択性はV1内で形成される性質とされてきたコントラスト非依存性も示す。そこでネコのLGNにおいてGABA抑制を遮断する実験を行ったところLGNニューロンの方位チューニングおよびそのコントラスト依存性に影響がなかった。また方位チューニングのオンセットを調べた実験ではおよそ3分の1のLGNニューロンにおいて、V1ニューロンの応答よりも早いタイミングで有意な方位チューニングを生じていた。これらの結果はLGNへのフィードフォワード入力によって方位選択性が形成されていることを支持する。 ネコの皮質下視覚中枢においては、受容野周囲を含む刺激に対して合目的的な反応修飾を生じ、V1以遠の情報処理の効率化を実現していると考えられる。
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