2008 Fiscal Year Annual Research Report
運動方向弁別における注意の空間解像度の神経メカニズム
Project/Area Number |
20020025
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
宇賀 貴紀 Juntendo University, 医学部, 准教授 (50372933)
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Keywords | 運動視 / 大脳皮質 / 連合野 / 神経生理学 / 視覚 |
Research Abstract |
一昨年、運動方向弁別課題を用いてヒトでcrowding(小さい対象物(target)の検出を行なう際、その周辺に妨害刺激(distracter)があると、distracterによってtargetの検出能力が阻害される現象)を測定した。その結果、distracterを増やしていくと、あるところまではtarget検出能力が下がるが、さらにdistracterを増やすと、逆にtarget検出能力が上昇すること(anti-crowding)を発見した。 今年度は、crowding課題を遂行中のサル大脳皮質MT野から単一神経細胞外記録を行い、MT野ニューロンの運動方向弁別能力でcrowdingとanti-crowdingを説明できるかを検証した。まず、偏心度の3割の直径を持つrandom-dotstereogram(RDS)を中心部分に、その周辺にランダムな方向に動くRDSを呈示し、中心のドットの運動方向を答えるcrowding課題を1頭のサルに訓練した。中心のドットは記録しているニューロンの受容野中心に位置し、ニューロンの最適方向あるいは反対方向に動いた。一定の速度で動くドットの割合は、中心は5〜80%の間でトライアルごとに変動し、周辺は常に0%であった。周辺のRDSは中心の0、2、4、8、16倍の大きさとしてトライアルごとに変動させた。 サル・ニューロンの閾値はともに周辺のRDSの直径が大きくなると一時上昇し、その後下降した。35個のMT野ニューロンから神経活動の記録を行い、周辺のRDSの大きさが中心の16倍のときの閾値を4倍のときの閾値と比較したところ、3個のニューロンで閾値が有意に低下し、さらに全体としても閾値が低下したことがわかった。以上の結果は、anti-crowdingがMT野ニューロンの活動の変化で説明できることを示唆する。
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