2009 Fiscal Year Annual Research Report
フェレットを用いた高次視覚神経系の形成過程の分子メカニズム解析
Project/Area Number |
20021009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河崎 洋志 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 特任准教授 (50303904)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 発生分化 |
Research Abstract |
外界からの視覚情報は網膜で検出され、中継核である視床の外側膝状体(LGN)を介して、大脳皮質一次視覚野へと伝達される。右もしくは左眼由来の軸索はLGN内で異なる場所を支配していることが知られており(眼特異的投射)、眼特異的投射は神経回路形成のメカニズムを解析するための代表的なモデル系として使われている。 発生段階の早期には、左右両眼からの軸索はLGN内で完全にオーバーラップしており、支配領域の分離は見られない。フェレットやマウスでは生直後より両眼由来の軸索の分離が始まり、生後10日には分離が完成することが知られている(眼特異的軸索分離)。従来の研究によれば、この眼特異的軸索分離は網膜からの感覚入力により形成することが知られているが、一端、軸索分離が完成した後にさらに眼特異的投射は可塑的に変化できるのか、臨界期はいつまでかという点はあまり分かっていなかった。 そこで我々は、眼特異的投射が完成した後の生後10日齢に一側の眼球を除去し、反対側の残存眼由来の軸索のLGN内での分布を検討した。その結果、残存眼に対して、同側および対側のLGNでいずれも残存眼由来軸索の投射領域が有意に広がっていることを見出した。この片眼切除による残存眼由来軸索投射パターンの変化は、片眼切除5日後にはすでに見られ、15日後には最大値に達していた。これらの結果は、眼特異的投射が完成した後でも、さらに軸索投射パターンが可塑的に変化する性質を持ち続けていることを意味している。 さらに臨界期を検討するために、片眼切除を行うタイミングを検討した。生後22日に片眼切除を行ったところ、投射領域は広がるものの広がりの程度はごく軽度であった。生後34日に片眼切除を行った場合には、投射領域の広がりはまったく見られなかった。これらの結果は、片眼切除による残存眼由来軸索投射の可塑的変化には臨界期が存在しており、生後22日から34日までの間に臨界期が終了していることを示唆している。 LGN内では、LGNの表面に沿って網膜軸索retinotopyマップが広がり、表-深層方向に質的に異なる情報が投射されている可能性が報告されている。そこで、LGN表面に対して、平行方向、および垂直方向への残存眼由来軸索投射の可塑的変化を検討した。その結果、残存眼由来軸索は垂直方向に広がりやすく、平行方向には広がりにくいことを見出した。この結果は、LGN内において、網膜由来軸索投射の可塑的変化の起きやすい方向があることを意味しており、何らかの分子的制約がかかっている可能性がある。 今後は、本研究により見出されたLGNにおける網膜軸索投射の可塑性、臨界期の分子メカニズムの解明が重要な課題であ
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Research Products
(8 results)