2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20022003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小椋 利彦 Tohoku University, 加齢医学研究所, 教授 (60273851)
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Keywords | 脳構築 / 細胞移動 / シグナル伝達 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
中枢神経系は種特異的な神経組織の構築を基礎とするが、神経組織そのものの発生は、昆虫からヒトに至る広範な生物種で保存された普遍的な原理に基づいている。本研究では、ハエから高等動物まで高度に保存された遺伝子の機能を解析し、新たな神経発生制御機構の一端を明らかにすることを目的とした。そのひとつ、DaamはWnt経路で働いて細胞の極性、移動に関与し、Dishevelled、EphBと会合し、Dynamin依存的に細胞表面のEphB分子endocytosisによる除去、引き続き起るされる細胞接着の解除に直接関与していることがわかった。細胞接着が解除され、細胞の自由な動きが可能となった後、Daam1は細胞骨格のリモデリングを誘導して細胞の動きを制御する。この仕組みは、神経組織の発生にも深く関与しているおり、事実、Daam1によって嗅球に向かう神経細胞の移動を促進したり、抑制したりすることが可能となった。また、細胞移動時に、クラッチ分子として働くCrip2蛋白の機能解析を行ない、Focal Adhesionとの機能的関連を調べた。 また、神経細胞を含む細胞移動は、細胞の変形を伴うが、この変形、ひずみを力学的に解釈する必要がある。本研究では、細胞に外的力が働き、細胞骨格の変形が起ると細胞骨格から核内にシャトルし、遺伝子発現の調節を行なう因子を複数同定した。そのいくつかは神経細胞そのもの、中枢神経系に入り込む新生血管の先端部に発現が認められ、細胞に加わる物理的な力を受容し、遺伝子発現に結びつけていると考えられる。この知見は、神経発生の解釈に新たな展開を引き起こすものである。また、脳の形態を張力、圧縮力で説明するための基盤を作った。
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