2009 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲン受容体を介した行動調節の脳内分子機構の解析
Project/Area Number |
20022005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小川 園子 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (50396610)
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Keywords | エストロゲン / RNA干渉法 / 遺伝子欠損マウス / 活動性 / 不安・情動性 / 視床下部 / 動機付け / 社会的認知 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、脳内での局と分子生物学的特性が確立している2種類のエストログン受容体(ER)、アルファ(ER-α)とベータ(ER-β)の各々の遺伝子の欠損マウスの行動解析を進め、2種のERが行動の制御に果たす役割の違いについて明らかにしてきた。本研究では、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて脳内のERの発現を領域特異的に操作したマウスの行動解析を通して、ER-αが脳内のどの領域において、エストロゲンによる行動の制御に関わっているのかを特定することを目指した。ER-αのsiRNAを組み込んだAAV(AAV.siER-α)あるいはコントロールAAV(AAV.siLuc)を、雄マウス(C57BL/6マウス)の視床下部腹内側核に両側性に投与したところ、ホームケージ回転車およびオープンフィールド活動量が大きく低下した。特に、組織学的検索により腹内側核の腹外側部でのER-αの発現がほぼ完全に消失していることが確認されたマウスにおいて、活動量の最も顕著な低下が見られた。さらに、エストロゲンによる活動の促進効果が全く見られないことが報告されているER-α欠損マウスにおいて、腹内側核腹外側部へのER-α遺伝子の再導入を試みたところ、部分的ではあるが回転車活動量レベルに回復が見られることが確かめられた。一方、内側視索前野にAAV.siER-αを投与したマウスでは、雄タイプの性行動は大きく低下したものの、攻撃行動や活動量には変化が見られなかった。この結果は、雄性ステロイドホルモンであるテストステロンは酵素アロマテースによりエストラジオールに変換された後、視床下部腹内側核のER-αに作用して活動性を亢進し、内側視索前野のER-αに作用して雄の性行動の生起を促進することを示唆する。本研究で確立した手法を用いて、行動制御の基盤となる脳内機構の解明に向けた研究が推進されることが期待される。
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Research Products
(18 results)