2008 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンリン酸化シグナルによる脳のストレス応答メカニズムの解明
Project/Area Number |
20022006
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大西 浩史 Gunma University, 生体調節研究所, 准教授 (70334125)
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Keywords | 蛋白質チロシンリン酸化 / 細胞間相万作用 / ストレス応答 / うつ |
Research Abstract |
受容体型膜蛋白質SHPS-1は、細胞内領域にチロシンリン酸化部位をもつ。SHPS-1は成熟した中枢神経系に特に強く発現しており、培養神経細胞では、SHPS-1は神経栄養因子などの刺激で細胞内領域がチロシンリン酸化を受け、このリン酸化依存的にチロシンボスファターゼSHP-2と相互作用してこれを活性化する。また、SHPS-1の細胞外領域のリガンドとして、5回膜貫通型蛋白質CD47が報告されており、両者は細胞間相互作用シグナルCD47-SHPS-1系を形成する。SHPS-1遺伝子破壊(KO)マウスは強制水泳テストにおいて、動物のうつ傾向の指標となる無動時間の増加傾向を示すことから、CD47-SHPS-1系は脳のストレス応答機構として機能する可能性が考えられる。今回、SHPS-1 KOマウスの脳の組織化学的解析を行ったところ、脳の構造には明らかな異常は認められず、SHPS-1 KOマウスの行動異常は発生過程の異常が原因ではないと考えられた。一方、野生型マウス脳において、強制水泳ストレスに伴ってSHPS-1のチロシンリン酸化が強く誘導されるとともに、下流シグナルであるSHP-2との相互作用が増強することを見出した。さらにCD47 KOマウスを用いた解析を行ったところ、CD47KOマウスでも強制水泳テストにおける無動時間の増加傾向が認められた。これらの結果は、CD47-SHPS-1系を介した神経細胞間相互作用シグナルが、チロシンリン酸化シグナルを介して脳のストレス応答に重要なメカニズムとして機能する可能性を示すものであると考えられる。
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