2009 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンリン酸化シグナルによる脳のストレス応答メカニズムの解明
Project/Area Number |
20022006
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大西 浩史 Gunma University, 生体調節研究所, 准教授 (70334125)
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Keywords | 蛋白質チロシンリン酸化 / 細胞間相互作用 / ストレス応答 / うつ |
Research Abstract |
受容体型膜蛋白質SHPS-1は、成熟した神経系に強く発現し、その細胞内領域がチロシンリン酸化を受けて細胞質型チロシンホスファターゼSHP-2と相互作用し、これを活性化する。SHPS-1の細胞外領域は、別の膜蛋白質CD47の細胞外領域と特異的に相互作用し、細胞間相互作用シグナルCD47-SHPS-1系を形成する。これまでに、SHPS-1やCD47の遺伝子破壊(KO)マウスが、強制水泳(FS)テストにおいて、動物のうつ傾向の指標となる無動時間の増加傾向を示すことを見出している。今年度は、SHPS-1シグナルによるストレス応答制御機構を明らかにする目的で、脳内蛋白質チロシンリン酸化について検討を進めた。FSストレスは、Srcファミリーチロシンキナーゼ(SFK)の活性化を誘導することを見出すと共に、SFKの1つFynのKOマウスの脳組織において、SHPS-1のチロシンリン酸化が減弱することを明らかとした。また、マイクロダイアリシスによる解析結果から、FSストレスは、脳において細胞外ノルアドレナリン量の増加を誘導することを確認し、さらに、ノルアドレナリンは、α1アドレナリン受容体を介してSHPS-1のチロシンリン酸化を増強する可能性を見出した。これらの結果から、FSストレスに伴う細胞外ノルアドレナリンの増加、さらにその下流シグナルとしてのSFKの活性化がSHPS-1のチロシンリン酸化に重要であると考えている。一方、FSストレスは、SFK依存性にNMDA受容体のNR2Bサブユニット、電位依存性K+チャネルのKvβ2サブユニットのチロシンリン酸化を誘導し、SHPS-1 KOマウスでは、これらのチロシンリン酸化状態に異常が見られることを明らかにした。
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