2008 Fiscal Year Annual Research Report
GPCRヘテロ複合体による中枢シナプス可塑性の調整
Project/Area Number |
20022025
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田端 俊英 University of Toyama, 大学院・理工学研究部(工学), 准教授 (80303270)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 / シグナル伝達 / シナプス可塑性 / 学習 / 記憶 / 運動 |
Research Abstract |
小脳プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は運動学習を支えるシナプス可塑性である小脳長期抑圧(LTD)を主導的に誘導する分子である。代表者らは、マウス小脳プルキンエ細胞樹状突起に代謝型グルタミン酸受容体mGluR1と近接して代謝型GABA受容体GABAbRと代謝型アデノシン受容体AIRが発現していることを見出した。免疫共沈によりGABAbRとmGluR1、AIRとmGluR1が直接あるいは他の分子を介して複合体化していることが分かった。主としてマウス培養細胞系を用いた電気生理学的実験により、GABAbRとAIRが小脳長期抑圧の誘導効率や深度に対してどのような影響を及ぼすかを解析した。GABAbRは脳髄液レベルのカルシウムやGABAを受容すると、Gタンパク非依存的に小脳長期抑圧の誘導効率を高めた。またGABAbRは小脳皮質介在ニューロン・シナプス終末から漏出するレベルのGABAを受容すると、Gタンパク依存的に小脳長期抑圧の深度を増大させた。AIRは脳髄液レベルもしくは小脳皮質ニューロンが活発に興奮したときに局所蓄積するレベルのアデノシンを受容するとGタンパク非依存的に小脳長期抑圧の誘導を阻害した。これらの効果のうちGタンパク非依存的なものは、mGluR1のグルタミン酸感受性を変調することに因るものと考えられた。一方、Gタンパク依存的な効果はmGluR1に連関する細胞内シグナリングの増強に因るものと考えられた。さらにマウス個体の小脳表面にGABAbRアゴニストを注入すると、小脳長期抑圧依存的なrota-rod運動学習課題の成績が向上する傾向が見られた。以上の結果は、GABAbRやAIRが相補的メタ・シナプス可塑性機構として働いている可能性を示唆している。
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