2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞が過剰な軸索の形成を抑制する分子機構の解析
Project/Area Number |
20022029
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 直之 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 准教授 (20223216)
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Keywords | 軸索 / 樹状突起 / 極性 / Singar / 神経回路 / 神経細胞 / 再生医療 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
神経細胞は通常1本の軸索と複数の樹状突起を有し神経極性を形成する。しかしながら、神経細胞が極性形成の過程でいかにして1本のみの軸索を形成しそれを維持することができるのか、その分子メカニズムはわかっていない。本研究では、我々が最近同定した新規脳特異タンパク質Single Axon Related(Singar)1の機能と分子メカニズムを中心に解析することにより、「神経細胞が、発生の過程でいかにして確実に1本の軸索を形成し、これを神経回路内で維持することができるのか」という問題の解明を目指す。 本年度は、Singar1をリン酸化するリン酸化酵素のスクリーニングを行い、GSK3betaとJNKがin vitroにおいてSingar1をリン酸化することがわかり、いくつかのリン酸化部位を同定した。GSK3betaとJNKは神経極性を制御することが報告されており、Singar1の機能を調節する可能性が示唆された。また、Singar1のノックアウトマウスの作成を行い、現在キメラマウスを得ている。一方、過剰発現によって過剰軸索形成を促進するShootin1に関しては、これまでその存在が示唆されていながら正体がわかっていなかった神経軸索伸長を引き起こすクラッチ分子であることがわかった。クラッチ分子は成長円錐の先端で重合するアクチンフィラメントを細胞接着分子につなぎとめて、成長円錐を前方移動させる分子である。また、Shootin1はリン酸化を受け、リン酸化が軸索伸長を正に制御することも分かってきた。このことからShootin1が細胞外シグナルの存在下で軸索伸長の調節に関与する可能性が示唆された。以上の結果から、軸索形成を正に制御するShootin1と負に制御するSingar1の作用のバランスが過剰な軸索の形成を抑制する重要な因子の一つと考えられ、今後更なる解析を進めたい。
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Research Products
(9 results)