2008 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホチロシンシグナルアダプターからみる海馬神経シナプス可塑性制御の分子基盤
Project/Area Number |
20022031
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森 望 Nagasaki University, 大学院・医歯薬総合研究科, 教授 (00130394)
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Keywords | 神経 / シナプス / アクチン骨格 / スパイン / シグナル伝達 / リン酸化 |
Research Abstract |
脳海馬における記憶学習成立の基本的な分子機構として、グルタミン酸系神経の活性化応答におけるポストシナプスでのスパイン形態変化が知られている。本研究では、受容体型チロシンキナーゼのシグナル応答に関わる神経特異的ホスホチロシンアダプターN-Shc/ShcCが、NMDA受容体刺激後のアクチン骨格再編成へ寄与するメカニズムをスパイン裏打ちタンパク質であるHomerとの機能連関の有無を含めて明らかにすることを目的とした。前年度までに、初代培養系海馬神経細胞へ種々のN-ShO/ShcCのリン酸化チロシン部位変異体を遺伝子導入し、その結果からN-Shc下流のRhoシグナルカスケードを遮断することによりスパイン数が顕著に減少することを見出した。また、N-Shc KOマウス由来の初代培養系海馬神経細胞では、スパイン数が有意に増加することを確認した。そこにN-Shcを強制発現させるとスパイン密度は野生型と同様な水準にまで回復した。一方、脳海馬切片スライスに遺伝子銃を用いて蛍光色素DiIを導入し、スパイン形態を調べたところ、初代培養系と同様にN-Shc KOマウスではスパイン数が増加していた。今年度は、NMDA受容体サブユニット、シナプトフイジン、PSD95等のシナプス関連分子の発現状況をN-Shc KOマウスと野生マウスで比較し、N-Shc KOマウスでは一部の関連分子の発現が上昇していることを見いだした。また、N-Shcの種々のチロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異体を導入することで、ある一カ所のチロシンからのシグナル系がこのスパイン形態の変動をもたらすことを突き止めた。この部位からのシグナル伝達に関わると想定されるリン酸化酵素の阻害剤等を使った実験で確認を進めた。これらの実験を現在とりまとめ投稿準備を進めた(Shiraishi-Yamaguchi et al., 投稿準備中)。
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