2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子・生化学マーカー・神経画像解析を組み合わせた統合失調症の進行性脳病態の解明
Project/Area Number |
20023009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠井 清登 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 教授 (80322056)
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Keywords | 統合失調症 / 遺伝子 / 生化学マーカー / 神経画像 / 進行性脳病態 |
Research Abstract |
統合失調症患者25名と、年齢、性別をマッチさせた健常対照者37名を対象として、204チャンネルMEG (Neuromag社) を用いて、音刺激の物理的特性の逸脱に対するミスマッチ脳磁場反応を聴覚皮質から得た。同一被験者に採血を行い、血漿中d-serine濃度を計測した。その結果、統合失調症群では、健常群に比べて、ミスマッチ脳磁場の強度の減弱や潜時の延長を認めた。血漿中d-serine濃度は、統合失調症群で有意に低下していた。さらに、統合失調症群において、ミスマッチ脳磁場の潜時延長は、d-serine濃度の低下と有意に相関していた。本研究は、統合失調症患者におけるグルタミン酸神経伝達の機能プローブとされるミスマッチ脳磁場と、NMDA receptor glycine binding siteの内因性アゴニストであるd-serineの血漿中濃度の関連を検討した初めての報告である。これらの結果から、統合失調症におけるミスマッチ脳磁場や血漿中d-serine濃度が、統合失調症のグルタミン酸神経伝達異常を反映するバイオマーカーとなりうることが示唆される。さらに、前駆状態患者や初発統合失調症患者のリクルートを、こころのリスク外来をたちあげることによって系統的に行ってミスマッチ陰性電位を測定し、前駆状態患者より初発統合失調症患者でより減衰していることも予備的に見出した。これらの結果は、臨床病期ごとの統合失調症の病態生理の解明や治療法の開発につながる可能性がある。
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Research Products
(7 results)