2008 Fiscal Year Annual Research Report
Aβオリゴマー仮説を検証する新しいアルツハイマー病モデルマウスの作製
Project/Area Number |
20023026
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
富山 貴美 Osaka City University, 大学院・医学研究科, 准教授 (10305633)
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Keywords | アルツハイマー病 / Aβ / オリゴマー / APP / トランスジェニックマウス / E693Δ変異 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)は、可溶性Aβオリゴマーによるシナプス機能障害で始まると信じられている。しかし、Aβオリゴマーが実際にヒトにおいてADを発症させているという証拠はなく、また、AβオリゴマーがADの病理にどの程度関与しているのかについては不明である。我々が家族性AD患者か照同定したアミロイド前駆体蛋白質(APP)の新しい変異(E693Δ)は、老人斑の形成なしに、Aβのオリゴマー化を促進することで病気を発症させていると考え照れ、上記の問題点を解明するための有用なツールとなることが期待された。そこで我々は、この変異型APPを発現するトランスジェニックマウスを作製し、その病理を野生型APPトランスジェニックマウスと比較することにより、AβオリゴマーのADにおける役割を調べることとした。このマウスは、8か月齢頃より、大脳皮質や海馬ニューロン内にAβオリゴマーが蓄積し始め、それとともにシナプスのマーカー蛋白質であるシナプトフィジンが減少し始めた。また、8か月齢において、海馬シナプスの長期増強の抑制やモリス水迷路での空間参照記憶の低下がみとめられた。一方、細胞外の老人斑は、24か月齢においても検出されなかった。これ照の結果は、以前に我々が報告した患者での観察結果とも合わせて考えると、AβオリゴマーだけでADが発症することを示唆しており、オリゴマー仮説を支持する有力な証拠となると考えられる。現在、このマウスを用いて、Aβオリゴマーの細胞内蓄積がタウのリン酸化やニューロンの脱落にどのような影響を与えるかを研究中である。
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