2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経炎症の制御を標的とした筋萎縮性側索硬化症の治療法の開発
Project/Area Number |
20023034
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山中 宏二 The Institute of Physical and Chemical Research, 運動ニューロン変性研究チーム, チームリーダー (80446533)
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Keywords | 神経炎症 / 筋萎縮性側索硬化症 / ミクログリア |
Research Abstract |
研究代表者は,これまでに遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルである変異SOD1マウスを用いた研究で,ALSにおける運動ニューロン死は,グリア細胞との細胞間ネットワークの異常により非細胞自律性に起こることを示してきた.また,変異SOD1マウスでは,疾患進行期にグリア細胞の活性化やそれに伴う炎症性サイトカインの放出,リンパ球の浸潤などがみられ,神経炎症というべき病態を呈している.まずALSの疾患進行期の脊髄病巣におけるグリア細胞の分子病態を解明するため,遺伝子発現の網羅的解析によってグリア細胞に異常発現する遺伝子群を同定した.そのうち,大半はミクログリアに主に発現するものであり,後述する自然免疫経路と関連する遺伝子群が含まれていた.次に候補遺伝子アプローチとして,ミクログリア特異的に発現し,その病巣への浸潤や炎症性サイトカイン発現に寄与しているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のALSモデルマウスの病態への関与を交配実験により検討した.このMMPを欠失した変異SOD1マウスでは,生存期間の短縮傾向がみられたが統計学的に有意ではなかった.さらに,自然免疫経路のシグナル伝達に重要な遺伝子であるMyD88, Trifのノックアウトマウスと変異SOD1マウスの交配実験を行ったところ,自然免疫系のシグナル伝達を抑制することにより疾患進行が著しく加速し,生存期間の著明な短縮がみられた.本研究から,神経炎症に関与する自然免疫経路の適度な賦活化はALSモデルにおいて神経保護的な役割をしていることが示唆された.
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Research Products
(6 results)