2008 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子電気伝導、非弾性トンネル分光、誘起反応の理論と第一原理計算
Project/Area Number |
20027002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 恒夫 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (30345095)
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Keywords | 量子細線 / 計算物理 / ナノコンタクト / 表面界面物性 / 走査プローブ顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究では単一分子やナノワイヤーでの電気伝導と非弾性散乱過程を統合的に扱う、第一原理に基づいた理論計算シミュレーション手法を開発し、実装することを目標としている。 計算シミュレーションの立場からナノリンク分子の設計やその性質について提言ができるよう、理論及びプログラムの開発、実装、適用が最終目的となる。 H20年度においては、非弾性電流計算をKeldysh形式で摂動展開し、非弾性電子トンネリング分光(IETS)計測の結果を解析可能とする理論形式と手法を開発した。 最近、STM-IETSは、様々な"電極/分子/電極"系に対しその測定が行われ、スペクトル形状とコンダクタンスの関係、吸着構造のプローブ、活性(振動)モードの選択則が議論されており、表面分光計測としての有用性が認識されている。一方で、赤外やラマン分光との対応関係、選択則といった基礎的部分においても、未だ不明な点が多い。また、非弾性電流過程としての側面に注目した場合、デバイスにおける局所発熱機構との問題とも関連している。 本研究で我々は架橋分子(コンタクト領域)がhigh-conductanceな系と、low-conductance系に対し、IETSシグナルの形状(つまり非弾性電流が伝導性の増減どちらに作用するのか)、吸着分子での赤外・ラマン選択性とIETS活性の関係といった問題に第一原理計算を適用し、より系統的な解析を行うことに成功した。特にlow-conductance系の場合、(1)エネルギー交換を行う非弾性チャンネルと実効的エネルギー交換は行わず、弾性散乱を補正するチャンネルが競合的になるが、どちらも伝導性の増加に働く(2)ベンゼンジチオールではIETSの活性と(分子での)ラマン活性相関が強いが、例外となるモードが低振動領域に存在する、といった実験での直接観測が困難な微視的詳細を明らかにすることができた。
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