2009 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子電気伝導、非弾性トンネル分光、誘起反応の理論と第一原理計算
Project/Area Number |
20027002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 恒夫 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (30345095)
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Keywords | 量子細線 / 計算物理 / ナノコンタクト / 表面界面物性 |
Research Abstract |
本研究では単一分子、ナノワイヤーでの電気伝導、非弾性散乱過程を統合的に扱う、第一原理に基づいた理論計算シミュレーション手法を開発し、実装することを目標とし、理論計算の立場からナノリンク分子の設計やその性質について提言ができるような理論及びプログラムの開発、実装、適用を目的としている。 H21年度においては、H20年度に引き続き非弾性電流計算、非弾性電子トンネリング分光(IETS)計測を第一原理計算に基づき解析可能とする理論形式と手法の開発と実在系への適用を行った。 STM-IETSは、様々な"電極/分子/電極"系に対しその測定が行われ、スペクトル形状、吸着構造のプローブ、活性(振動)モードの選択則が議論されており、その表面分光計測方法としての有用性が認識されている。また活性モードによる非弾性電流が電子トンネリングのpathwayを表しているという可能性も指摘されてきた。一方で、赤外やラマン分光との対応関係や選択則に対しては、従来のサイト電荷応答モデルでは全く説明できないラマン・IR禁制モードのIETS応答が理論計算からは得られている。 本研究で我々は、非弾性電流計算、電子-分子振動結合定数においても、2D-BZサンプリングが可能なように、我々独自のプログラムを拡張し、架橋分子や分子膜でのI-V特性、非弾性電流、IETSだけでなく、サイトでの電子移動経路や振電状態移動経路までKeldysh形式により第一原理から決定する方法を提唱した。low-conductance系に対し、吸着分子での赤外、ラマン選択性と、IETS活性の関係をより系統的に求めるために、分子デバイスへの「内部置換(ドーピング)」の概念をとりいれ、計算から置換による伝導経路やエネルギー移動経路の歪みを計算し、またIR/Raman-IETS相関が一般的には(全対称のような明確なモードでも)成立しないことを示した。
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