2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20028013
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根村 英克 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (80391738)
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Keywords | ストレンジネス / 第一原理計算 / ハイパー核 / 量子色力学 / 格子QCD / 逆散乱問題 |
Research Abstract |
格子QCD計算を通じて、ストレンシネスの入ったバリオン間相互作用のもっとも重要なチャネルであるΛN相互作用について調べた。 陽子と中性子(核子)の間には、束縛状態ができるほどの強い引力が働き、これが核子多体系の自己束縛系を作っている。現象論的には、核力の性質は精密に調べられているが、その力の起源や、非常に短距離領域での相互作用の性質、3核子以上系での相互作用の詳細な性質、などについては、まだ未解明の部分が残されている。 とりわけ、中間子交換模型などによる核力の研究がこれまでに進められてきたが、「強い相互作用」を記述する、より基本的な枠組みである量子色力学と核力とのつながりは、まだ明確ではない。 本研究では、量子色力学に基づいた理論的解析手法の一つである格子QCD計算の方法の中でも、とくに最近の発展が著しい、低エネルギーのハドロン間相互作用を調べる方法を応用することにより、ハイペロン核子相互作用の性質を調べた。 PACS-CSグループによって生成された、2+1フレーバQCDのゲージ配位を利用し、比較的大きな空間体積(2.9fm)^3における、π中間子の質量で約700~400MeVに相当するクォーク質量のもとで、ΛN系の低エネルギーの散乱状態の波動関数を格子QCDシミユレーションによって求めた。この散乱状態の波動関数の空間相関の情報をシュレーディンガー型の方程式に適用し、ΛN系の中心力およびテンソルカポテンシヤルをることに成功した。 非常に短距離の領域では斥力芯が存在し、中長距離領域に引力を引き起こす部分があるという、これまでの中間子交換模型などによる記述と定性的に似た振る舞いをしていることが分かった。また、テンソルカは通常の核力の場合と比べて弱いことがわかった。ΛNにはπ中間子交換が寄与しないことと定性的によく対応している。
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