2008 Fiscal Year Annual Research Report
ボーズ凝縮体における異常散乱の理論と基礎理論の検証
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20029007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雄介 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20261547)
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Keywords | ボース凝縮 / 超流動 / ボゴリューボフ理論 / 透過 / 反射 / 異常トンネル効果 / スピノールBEC / 臨海速度 |
Research Abstract |
ボース凝縮体の励起粒子は長波長極限で、ポテンシャル障壁を反射することになしに完全透過することが、2001年にKovrizhinらによって、特定のポテンシャル障壁に対して解析的に示され、さらに2008年にKatoらによって一般のポテンシャル障壁の場合に示された。この現象、いわゆる「異常トンネル現象」の成否とボース系の基礎理論の関係を明らかにすることが当初の研究目的の一つである。Kato(2008)の中で、異常トンネル効果の成否は、励起粒子の低エネルギー極限における波動関数が凝縮体波動関数に一致するかどうかによって決まることが明らかにされていた。その事実を発展させるとHugenh olz-Pinesの定理が成り立つ近似理論においては異常トンネル効果が生じることがわかった。また当初のもう一つである内部自由度のあるボース凝縮系における有無については、S=1のスピノールボース系での透過・反射問題に取り組み、強磁性相、ポーラー相における励起モード(密度揺らぎ、スピン揺らぎ、「四重極」揺らぎ)の長波長極限における透過係数は、モードによっては完全透過ではなく、完全反射する場合があることを見出した。異常トンネル効果の実験的検証に関連して、ポテンシャル障壁の両側で凝縮体密度が異なる状況での励起粒子の透過反射係数を導き、特定の入射角度のときのみ、完全透過が起こることを見出した。これはボゴリューボフ励起において、電磁気学におけるブリュースター角に相当するものがあることを示している。ポテンシャルに垂直に入射する場合の透過反射係数と、ラッティンジャー流体のポテンシャル障壁に対する透過反射係数が、弱い相互作用の極限で一致することを導き、Kane-Fisher(1992)によって提起されたラッティンジャー流体の(引力フェルミオンまたは斥力ボソンの)完全透過性とボース凝縮体の異常トンネル効果が同種の物理現象であることを見出した。
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