2008 Fiscal Year Annual Research Report
回転超流動内および超流動自由表面における量子乱流現象の実験的研究
Project/Area Number |
20029021
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 大輔 The Institute of Physical and Chemical Research, 河野低温物理研究室, 協力研究員 (80415215)
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Keywords | 超流動 / 量子渦 / 超流動乱流 / 臨海現象 |
Research Abstract |
本研究ではヘリウム表面直下に形成される二次元イオンに系の輸送現象に対する量子渦の影響、量子渦と自由表面の相互作用の様子、および二次元イオン系が形成する量子渦輪により引き起こされる超流動乱流状態に対する渦糸の影響を観測するのが目的である。 超流動ヘリウム中でヘリウムの正イオンもしくは負イオンを加速すると、臨界速度以上において量子渦輪の生(nucleation)もしくはロトンの自己放出によりイオン近傍より超流動性の破壊がおこることが知られている。負イオンを用いたバルク中の実験では量子渦輪のnucleationメカニズムが実験的に明らかになっている。しかし、正イオンに関しては現在に至るまで詳細な実験が行われていない。上記目的を完遂するに当たり、これまでの実験から正イオンの方が表面近傍に安定して保持されることがわかった。正イオンに対する量子渦生成に関する臨界速度を明らかにするため、本年度は二次元正イオンの系の輸送現象の測定を行った。 イオン系への印加電場を増加し、イオンを加速すると、低速度では外場に対して線形応答を示すが、特徴的な臨界速度において急激に非線形応答領域へと遷移する現象がこの系で初めて観測された。この非線形応答の起源は、イオンの作る速度場により超流動中に生成された量子渦輪がイオンに付着することに寄っていると現在考えている。また臨界速度は温度依存性を示すことが明らかになった。臨界速度およびその温度依存性はこれまで負イオンで考えられてきたnucleationモデルと一致しない。これは負イオンと正イオンの超流動液体に対する境界条件の違いに起因すると考えている。
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Research Products
(3 results)