2009 Fiscal Year Annual Research Report
回転超流動内および超流動自由表面における量子乱流現象の実験的研究
Project/Area Number |
20029021
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 大輔 The Institute of Physical and Chemical Research, 河野低温物理研究室, 協力研究員 (80415215)
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Keywords | 超流動 / 量子渦 / 巨視的トンネル現象 / 量子乱流 |
Research Abstract |
本年度は超流動ヘリウム中の量子渦に関して1核生成および2Kelvin波の励起に着目し研究を遂行した。下記にその概要を示す。 1. 量子渦核生成は流体中の速度が臨界速度を超えることで生じ、また核生成課程は巨視的トンネル効果の候補として非常に興味深い。一方、核生成の閾値である臨界速度はこれまで実験的に明らかではなかった。我々は超流動ヘリウム自由表面直下に二次元正イオンを蓄積し、イオン速度の電場依存性の測定を行うことで臨界速度を測定した。 イオン速度がある臨界値を越えると急激に少することをこの系で初めて観測した。この状態の転移はイオンの周りの流れ場が非回転な流れから量子渦を伴う流れへと転移をすることに対応していると考えられる。臨界値には特徴的な温度依存性が確認された。温度依存性は巨視的量子トンネル確率が量子摩擦によって抑制されることに起因することが示された。 2. 近年、粘性がゼロの超流動ヘリウム中で発現する量子乱流系と粘性流体の古典乱流のエネルギーカスケードの相似性が注目されている。量子乱流系においては渦度が独立に存在するため、乱流減衰の本質である渦のエネルギー散逸を観測するに適する系と考えられている。 我々は回転下において、上記の正イオン系に対する低入力電場領域でのプラズマ共鳴実験を行った。回転下では渦芯まわりのイオンが量子渦終端点にトラップされることが期待される。この手法により量子渦へ量子乱流減衰の本質であるKelvin波を励起できることを期待している。 回転数を増加することで試料容器内の量子渦密度を増加すると、共鳴周波数および半値幅が回転数に比例して増大する変化が観測された。これらの結果は量子渦にトラップされたイオンに渦の張力が働くことによる共鳴周波数の増加、および正イオン系が量子渦糸にKelvin波を励起することでエネルギーの移動が起きたことによる半値幅の増加に対応していると考えている。
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Research Products
(7 results)