2008 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリア由来光化学II複合体の高磁場ESRによる研究
Project/Area Number |
20030007
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
中村 敏和 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 准教授 (50245370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 秀人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90414002)
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Keywords | 光合成 / シアノバクテリア / 光化単系II / 多周波ESR / パルスESR / 単結晶ESR / 酸素発生中心 |
Research Abstract |
本研究では、酸素発生過程の解明に向けて、シアノバクテリア由来PSII反応中心の単結晶および凍結溶液試料を対象としたX-, Q-, W-band ESR分光法による以下の研究を行ってきた。まず、primary electron donor(P680)とMn_4クラスターとの間に位置し、水酸化-酸素発生過程で生じるプロトンおよび電子移動に深く関わっているチロシン残基D_1-Tyr_161(Tyr-Z)の単結晶ESRスペクトルを、Q-およびW-bandにおいて初めて観測することに成功した。結果、Tyr-Zがもう一つのチロシン残基D_2-Tyr_<160>(Tyr-D)と完全なC_2対称にないことを明らかにした。単結晶スペクトルの完全解析を行うには、マイクロ波による飽和の影響を排除したパルスESR測定が不可欠である。また、Mn_4クラスターそのものの構造決定には、Mn_4クラスターの正確なgテンソルの決定、ならびに各Mn核についての磁気パラメータを決定する必要があり、これにパルスESR法が有力な測定手法となることが期待される。そこで我々は本年度、W-bandにおけるパルスESR装置の開発も行った。得られた装置を用いて、凍結溶液試料中のMn_4クラスターに対して測定を行ったところ、市販のW-balldパルスESR装置よりもひと桁以上S/N比の高いシグナルを観測することができ、微小な単結晶試料に対しても十分適用可能であることを確認した。
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