2008 Fiscal Year Annual Research Report
新奇な量子スピンフロップ現象の観測を目指す理論的研究
Project/Area Number |
20030008
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
坂井 徹 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (60235116)
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Keywords | 量子スピン系 / スピンフロップ / スピンラダー / スピン液体 / スピンギャップ |
Research Abstract |
従来の研究により、容易軸異方性を持つスピン1反強磁性鎖において、強い量子効果により2つの異なる磁場誘起朝永・ラッティンジャー液体間の量子相転移として、2段階の量子スピンフロップ転移が起きることが理論的に予測されていた。本年度の研究において、この量子スピンフロップ転移で現れる中間相が、スピンネマティック相であることを示し、スピン1反強磁性鎖だけでなく、強磁性の桁相互作用を持つスピンラダー系、及び混合スピン鎖においても起きることを、理論的に明らかにした。 この新しい磁場誘起スピンネマティック相の理論を用いて、強磁性の桁相互作用を持つスピンラダー系IPA-CuCl_3で観測されている2段階のスピンフロップ転移を、理論的に説明することを試みたが、残念ながら基底状態のギャップの性質が異なる(ハルデン相)ことから、この理論だけでは不十分であることが判明した。そこで、このスピンラダ一系の各正方形ブラケット上にはたらくリング交換相互作用により生じるスピンネマティック相による、新しいシナリオを提案した。この理論により定量的に説明できるかどうか、現在検討中である。
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