2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20031024
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石黒 慎一 Kyushu University, 理学研究院, 教授 (80111673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 亮 九州大学, 理学研究院, 助教 (50363320)
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Keywords | イオン液体 / 酸塩基性 / 酸解離定数 / イオン溶媒 |
Research Abstract |
解離性プロトンを含むプロトン性イオン液体(PILs)は、溶媒としての酸塩基性があり、これを如何に定量的に評価するかが、今、世界的な課題となっている。Angellらはイオン液体の「イオン性」に対して△pK_aを定義している。これは、PILを構成する塩基の共役酸(HB^+)と強酸の共役塩基(A^-)の酸塩基性を水溶液中の酸塩基反応の酸解離定数pK_aから、イオン液体中での反応、BH^++A^-=B+AH、の平衡定数をΔpK_a=pK_a(B)-pK_a(AH)と見積もったものである。しかし、水溶液中のpK_aは水和効果が含まれており、水和のないイオン液体中で適用できるか不明である。我々は、PILのプロトン移動反応の平衡定数K_<IL>を電位差編測定により直接決定する方法論を確立した。様々なPILsに対して、そのプロトン移動定数を決定し、その値から溶媒の酸塩基特性を比較検討できる。超強酸でpK_a未知のHtfsa、HtfOと弱酸でpK_a既知のCF_3COOH、CH_3COOH, HCOOHを用いて、メチルイミダゾール(MIm)との反応から合成された一連のイオン液体のプロトン移動定数を決定し、それらのΔpK_aと比較した。HtfsaとHtfOのΔpK_aは、水溶液中でのpK_aが未知であるので見積もることはできないが、イオン液体のΔpK_aと実測のプロトン移動定数との相関から、水溶液中のpK_a値を見積もると、HtfsaとHtfOのpK_aの値は-5.2と-3.6となり、硝酸、塩酸よりも強い酸であることが示された。また、HtfsaとHtfOの酸性度には、これまで大きな違いがあると云われていたが、実際には、違いは小さいことが判明した。また、硝酸エチルアンモニウム(EAN)中で弱酸の酸解離定数を決定することに成功し、EAN中では、弱酸の酸性度は水溶液中よりも小さくなることが示された。これは、定性的に、溶媒アニオンの塩基性が水より小さいためと考えれば理解できる結果である。
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