2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20032011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮地 英敏 Kyushu University, 附属図書館付設記録資料館, 准教授 (90376575)
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Keywords | 陶磁器 / 石炭窯 / 有田 / 筑豊 / 瀬戸 / 技術革新 / 技術史 / 経済史 |
Research Abstract |
2008年度は資料蒐集を重点的に行い、有田、名古屋、東京などで石炭窯開発およびその普及に関するデータを取得した。そこで得られた知見を以下に概括する。まず、明治期における石炭窯開発は、G. ワグネルの弟子である松村八次郎によって実現したのであるが、日本における石炭品質の低さに規定されて、高級品には不適な水準のものに過ぎなかった。愛知県瀬戸地方や岐阜県東濃地方では、松村式石炭窯による燃料費節減に着目して、石炭窯が急速に普及していくことになるが、高級品を志向していた佐賀県有田地方では、松村八次郎が肥前出身であったために積極的に紹介したにもかかわらず、また佐賀県が補助金を散布して定着を促したにもかかわらず、石炭窯はなかなか普及を見ることはなかったのである。 瀬戸や東濃が、わざわざ北部九州から石炭を遠路取り寄せて繁栄を極めている状況下で、有田においても石炭窯による低級品の大量生産が企図された。ところが皮肉なことに、有田に近在する佐賀県の唐津炭田や、また隣接する長崎県の炭田から産出される石炭は、硫黄分、灰分、粘結性、固定炭素分など、石炭の成分を細かく要求する陶磁器向け石炭窯の性格に合致することはなかった。先述の瀬戸や東濃は、北部九州の中でも筑豊炭田の石炭を利用していたのであるが、有田もまた筑豊炭田の石炭を使わざるを得なかったのである。これが、県による補助金によっても石炭窯の普及を促せなかった大きな要因であった。
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