2009 Fiscal Year Annual Research Report
多核金錯体による発光性ネットワーク構造の合成とトライボクロミズムの研究
Project/Area Number |
20036003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 准教授 (90282300)
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Keywords | 金錯体 / 発光性 / トライボクロミズム / ナノ構造 / 多核錯体 |
Research Abstract |
本研究では、金(I)-イソシアニド錯体が、顕著な発光性メカノクロミズム特性を有していることを明らかにした。この錯体は乳鉢中ですりつぶすなどの機械的刺激により、そのフォトルミネッセンスが大きく変化する上、発光性が変化した錯体を溶媒にさらすことで、容易にもとの発光状態へ戻すことが可能である。また、この現象のメカニズムについて考察を行った。今年度は、メカノクロミズム特性を持つ化合物を水中に分散してできる有機ナノ結晶が、単価結晶状態、溶液状態とは大きく異なる発光特性を有することを明らかにした。また、単結晶にたいして、AFMを用いて刺激を加えることにより、ミクロサイズのスクラッチが形成でき、さらにこのスクラッチ痕が発光性の変化として観察できることを明らかにした。この化合物は、こする前の状態では青色発光を示す微結晶であり、これにすりつぶすという機械的刺激を加えることにより、アモルファス状態へと変化する性質を持つ。青色発光を示す微結晶では、π-πスタッキングによる分子間相互作用が支配的であるが、アモルファス状態では、おそらく、金原子間同士の弱い結合が形成され、これを介した分子間相互作用が支配的になると考えられる。溶媒を加えると再結晶がおこり、熱力学的に安定なもとの青色発光を示す状態に戻る。この現象は、配位子に含まれるフッ素原子の小さい分子間力により、分子同士のずれが起こりやすくなり、機械的刺激による固体相の変化が誘起されやすくなっていることが一つの要因であると推測される。熱分析などの結果からは、この機械的刺激によってもとの状態より高いエネルギー状態のメタ安定状態が形成されていることが示唆された。
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