2009 Fiscal Year Annual Research Report
特異な構造と機能をもつ有機ケイ素クラスター化合物の研究
Project/Area Number |
20036012
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
久新 荘一郎 Gunma University, 大学院・工学研究科, 教授 (40195392)
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Keywords | オクタシラキュネアン / 有機ケイ素クラスター / π単結合 / 共役 |
Research Abstract |
有機ケイ素クラスターとしてオクタシラキュネアン骨格に四つのシクロテトラシラン環が縮合した化合物を合成した。この化合物は16個のケイ素原子から成る骨格をもち、分子内にスピロポリシラン、L字形ラダーポリシラン、ポリシラプロペラン骨格を含んでいる。この化合物は^1H NMRにおいて、tert-ブチル基のプロトンによるシグナルを1.27~1.71ppmに示す。この値はケイ素に置換したtert-ブチル基のプロトンが通常は0.9ppmに現れるのに比べて低磁場シフトしている。これはケイ素-ケイ素結合のσ電子によるクラスター内の環電流効果によるものと考えられる。また、この化合物は橙色の結晶であり、紫外可視吸収スペクトルでは約550mmまで吸収が伸びているが、明確な吸収帯は示さない。理論計算の結果、これは分子軌道が集積して半導体のバンド構造に似た状態になっているためであることがわかった。これらの結果から、この化合物は通常の有機ケイ素化合物とは異なり、有機ケイ素クラスターとしての性質を示すことが明らかになった。 また、ケイ素-ケイ素π単結合と他のπ結合が共役するかどうかを調べるために、橋頭位にフェニル基をもつ2,2,4,4-テトラ-tert-ブチル-1,3-ジフェニルビシクロ[1.1.0]テトラシラン(1)を合成した。X線結晶構造解析を行ったところ、橋頭位のフェニル基はビシクロ[1.1.0]テトラシラン環の平面に対して10.9傾いているが、共平面に近い構造をとっていることがわかった。このような共平面構造を反映して、化合物1の紫外可視吸収スペクトルにおけるπ-π*吸収帯は572nmに観測され、この値は1,2,2,3,4,4-ヘキサ-tert-ブチルビシクロ[1.1.0]テトラシラン(2)の488mmより84nmだけ長波長側にシフトしている。また、化合物1はサーモクロミズムを示し、溶液は室温では紫色であるが、77Kでは青色になることがわかった。
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Research Products
(17 results)