2008 Fiscal Year Annual Research Report
アゾ基と典型元素の相乗効果に基づく蛍光性分子の開発と制御
Project/Area Number |
20036015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 隆幸 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (80011766)
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Keywords | 構造・機能材料 / 合成化学 / 光スイッチ / 光物性 / 有機化学 |
Research Abstract |
4位および4'位に種々の置換基を有する2, 2'-ジボリルアゾベンゼンを合成した。光照射すると蛍光を発し、吸収極大および蛍光発光極大はともにモノボリルアゾベンゼンよりも長波長シフトしていた。このレッドシフトは、二つのN-B配位結合によって平面性が高い構造を有していることから、π電子系が有効に共役するようになった結果であると考えられる。4位および4'位の置換基からの電子供与性が強いほど、発光極大が長波長シフトしたため、橙色や赤色の長波長の蛍光発光を達成できた。さらに、簡便に4位の置換基検討が行えるように、4-ブロモー2-ボリルアゾベンゼンを共通の前駆体とするクロスカップリングにより、複数の蛍光性ホウ素置換アゾベンゼン誘導体の合成を試みた。鈴木カップリング反応およびBuchwald-Hartwigアミノ化反応により、それぞれフェニル置換体およびN, N-ジフェニルアミノ置換体を合成できた。次に、2位および2' 位にフルオロジフェニルシリル基を有するアゾベンゼンを合成した。蛍光発光は示さなかったが、4位および4'位の置換基がメチル基とブチル基の誘導体について、溶液中ではほぼ同様のスペクトルを示すにもかかわらず、固体状態で顕著な色の違いが見られた。固体状態での構造と色の関係を調べたところ、ブチル体では分子内窒素-ケイ素配位結合が存在するのに対して、メチル体では窒素-ケイ素配位結合が存在せず、ケイ素の配位状態に違いが見られた。二つの化合物の固体状態での拡散反射スペクトルにおいて、n-π*遷移に由来する吸収で大きな違いがあり、窒素の孤立電子対がケイ素への配位結合に使われるかどうかによって、色の違いが発現することがわかった。固体状態での配位結合の有無が異なる二つの異性体を単離することで、配位結合の形成の有無がアゾベンゼンの色の違いに及ぼす影響を、はじめて明らかにすることができたと言える。
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