2008 Fiscal Year Annual Research Report
アルキニルホウ素アート錯体の特性に基づく遷移金属触媒反応の開発
Project/Area Number |
20036023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 正浩 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (20174279)
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Keywords | ホウ素 / パラジウム / π共役系 / 有機合成 / 有機エレクトロニクス / 電子輸送材料 / 発光材料 / 有機EL |
Research Abstract |
配位性窒素原子を含むπ共役系化合物の適切な位置にホウ素を導入し、分子内ホウ素-窒素配位結合を形成した化合物群は新しい電子輸送材料や発光材料として有機エレクトロニクスへの利用が期待されている。しかし、従来の有機ホウ素化合物の合成法ではこれらの誘導体を自由自在に合成することはできず、新しい合成法の開発が重要な課題となっていた。本研究において、パラジウム触媒を用いることによりピリジニオ基を有するアルキニルトリアリールボラートの転位反応が進行し、ピリジンーボラン分子内錯体が高収率で得られることを見いだした。まずプロトンが窒素上からパラジウムへと移り、ヒドロパラジウム種が生成した後、アルキン部位へのヒドロパラデーションによってアルケニルパラジウム種となる。続いてホウ素上のアリール基がパラジウム上へと転位した後、還元的脱離が起こることによって生成物を与えたものと考えられる。興味深いことに、得られた生成物に紫外光をあてると青色に発光した。ホウ素部位を除いた化合物は全く発光しないことから、この発光性はホウ素が配位することによってもたらされたことが明らかとなった。また、電気化学的特性を調べたところ、容易に電子を受け取り、なおかつその還元体は安定であることがわかった。さらに有機ELの電子輸送層として従来用いられているAlq3との比較をおこなったところ、ピリジンーボラン錯体の方が優れた電子受容性を持つことが明らかとなった。このように発光性や高い電子受容性を持つことから、これらの化合物は既存の有機ELの駆動電圧の低下を実現する可能性があるばかりでなく、空気に対して安定な発光ダイオードとして注目を集めているHOILED等の次世代の有機エレクトロニクス材料への応用が期待される。
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