2008 Fiscal Year Annual Research Report
高周期典型元素π電子系-遷移金属元素からなるd-π電子共役系の構築とその性質解明
| Project/Area Number |
20036024
|
|---|
| Research Institution | Kyoto University |
|---|
Principal Investigator |
笹森 貴裕 Kyoto University, 化学研究所, 助教 (70362390)
|
|---|
| Keywords | 高周期14族元素 / 立体保護 / ジシレン / フェロセン / d-π電子糸 / 酸化還元 / MLCT遷移 / サイクリックボルタンメトリー |
|---|
| Research Abstract |
本研究は、高周期14族および15族元素を含むπ電子系と遷移金属のd電子系からなる新規なd-・電子系の構築とその物性解明を行い、典型元素π電子系と遷移金属元素の相乗効果の解明を目的としている。本年度は、高周期14族元素π電子系と鉄原子を含むフェロセンに注目し、二つの フェロセニルユニットをジシレンユニット(Si=Si)で架橋した1, 2-bis(ferrocenyl)disileneについて検討を行った。本来ジシレン類は非常に反応活性で取り扱い困難である化学種であるため、立体保護基としてTip基(2, 4, 6-triisopropylphenyl基)を導入することとした。Tip(Fc)SiCl2(Fc=ferrocenyl)に対し、還元剤としてリチウムナフタレニドを作用させたところ、新規な1, 2-ビス(フェロセニル)ジシレン(E)-Tip(Fc)Si=Si(Fc)Tip(1)が室温でも安定な橙色結晶として得られた。各種スペクトル測定や線結晶構造解析により、ジシレン1の構造・物性を詳細に解明した。特にUV/visスペクトルにおいて、フェロセニル基のFe部位とSi=Si二重結合部位のMLCTに相当するバンドが観測されたことは興味深い。またサイクリックボルタンメトリーにより、1の酸化還元挙動を解明した結果、1は酸化側および還元側にそれぞれ二段階の可逆な酸化還元波を与えることが判った。これらの結果は、本来酸化還元には不安定なジシレン類が、フェロセニルユニットの相乗効果により安定な酸化還元系となることが判ったのみならず、二つのフェロセニルユニット間のSi=Siユニットを介した顕著なd-π共役が支持される結果であり興味深い。今後、これらの物性を詳細に解明し、高周期14族元素間π電子系と、9族遷移金属との相乗効果を系統的に解明する。
|
