2008 Fiscal Year Annual Research Report
後期遷移金属と15および16族元素相乗作用によるπ共役分子の創製
Project/Area Number |
20036031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大江 浩一 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (90213636)
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Keywords | チオカルバモイル / ビニルカルベン / (2-チエニル)カルベン / 開環反応 / シクロプロパン化反応 / フリルチオフェン |
Research Abstract |
共鳴効果の期待できるチオカルバモイル基を新たに導入した二種類のアルキンを前駆体としてこれまで達成されていないビニルカルベンおよび(2-チエニル)カルベン錯体の発生とそれらを利用した新しい触媒反応を検討した。まず、チオカルバモイル基の転位によって発生するビニルカルベン錯体が鍵中間体となり進行するカルベン移動反応を利用して複素環の開環反応を検討した。その結果、全く反応が進行しない2級酢酸プロパルギルとは対照的にチオカルバミン酸0-プロパルギルでは効率的にフラン開環反応が進行した。一方、対応するカーバマートではその収率は中程度にとどまった。チオカルバモイル基の共鳴効果により硫黄の求核性が向上したこと、C=O結合の生成が駆動力となるため、チオカルバミン酸0-プロパルギルでは効率良く反応が進行したと考えられる。次に、種々の触媒を用いて2級チオカルバミン酸0-プロパルギルの反応を検討した。ルテニウム錯体の他、ロジウム、金、および白金錯体もフラン開環反応に活性があった。特に塩化白金触媒を使うと、種々の2級チオカルバミン酸0-プロパルギルが収率良くフラン開環生成物を与えた。次に、チエニルカルベン錯体の発生を検討した結果、ロジウムや金錯体を触媒に用いるとチオカルバモイル基を持つエンインから効率良く(2-チエニル)カルベン錯体が発生することを見出した。特に、酢酸ロジウム触媒が本反応に効果的であり、複素環の開環生成物が定量的に得られた。また、アルケンとの反応では、シクロプロパンが高収率で得られることもわかった。特にシクロプロパン化反応の場合、溶媒効果が顕著であった。極性溶媒による遷移状態の安定化が重要と思われる。このチエニルカルベン錯体の発生法は、既に見出しているフリルカルベン移動反応のほとんどの反応形式に応用できる。特筆すべきことに、カルボニル基とチオカルバモイル基を持つジエンインからフリルチオフェンが良好な収率で得られた。これをカップリング反応へと応用することによりフォトクロミズムを示す化合物群を容易に合成できた。
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